芸能

三宅裕司「東京喜劇を忘れて60歳で気がついた」/テリー伊藤対談(3)

テリー でも、こういう舞台をずっと続けられるって幸せですよね。

三宅 いや、ほんとにそう思いますね。カーテンコールがたまらないんですよ。それで「やってよかったな。よし、来年はもっとおもしろいのをやろう」って思うんですよね。

テリー 三宅さんは若くして「スーパー・エキセントリック・シアター(SET)」で大人気になったでしょう。それでラジオに行って、テレビで人気番組の司会をいくつもやって。今までに人生の壁とかってあったんですか?

三宅 それね、前に考えたことがあるんですけど、たぶんテレビで忙しくなった時ですね。テレビ業界って、視聴率を取れば何でも許されるじゃないですか。コント番組をやってもプロデューサーが「さあ、もう少し頑張ってね。いい寿司屋を押さえてあるからね」みたいな。寿司って大好きだったんで、その寿司屋へ行きたいから頑張るんですよね。

テリー わかります。

三宅 ところが、そんなふうに「何でも来い」「忙しくても何でもやってやるぞ」って続けてると、そのうち自分が一番やりたかったこと、得意なことを忘れちゃうんですよね。演じる笑いがやりたくて芸能界に入ったのに、ドリフターズの「(8時だョ!)全員集合」が視聴率で「(オレたち)ひょうきん族」に抜かれた時に、「ひょうきん族」みたいな素で笑わせる、裏を見せるような笑いが評価されて、ドリフみたいな作り込んだ笑いの企画が全然通らなくなったんですよ。「演じる笑いはもう古い」と言われて。だから、それは壁でしたね。で、そこから司会者になるわけですよ。

テリー あっ、そうだったの?

三宅 そうなんです。司会っていうのは、ほんとに自分をさらけ出して、どのぐらい素でおもしろくできるかをいつも見られている恐怖感があって。でも、それをやらないと生き残れないんじゃないかという。やりたいのは演じる笑いだったはずなのに、そっちばっかり一生懸命考えちゃうんですよ。

テリー へぇ。

三宅 でも「俺って、ほんとにおもしろい人間なのかな?」って思うと、別にそうじゃなくて真面目な人間なんですよね。

テリー お笑いの方は多いですよね。

三宅 多いですね。「おもしろいことを演じるにはどうするか」を真面目に考えるから、演じる笑いがおもしろいわけで。

テリー はい。

三宅 そうすると、(ビート)たけしさんとか、関西のお笑いの人とか素がおもしろい人がたくさんいて、「私生活がどのぐらいおもしろいか」っていう生き様を見せる笑いになってくると、もっといろんなところへ飲みに行って、馬鹿な体験をしないとフリートークでおもしろい体験談が話せないみたいな。そんな状況の中で生きていくには、演じる笑いなんてまったく必要がなくなってきて。

テリー そういうことか。

三宅 それで芸人さんのブームが何回かあって、どんどん仕事がなくなってきて、苦しくなって、ストレスとかが溜まって、脊柱管狭窄症と椎間板ヘルニアで入院することになるんですよね。

テリー それがいくつの時ですか。

三宅 60歳です。そこで入院して、またいろいろ考えて、「何やってるんだろうな」と。自分が芸能界に入ったのは東京喜劇を作るためだったのに、すっかり全部忘れて。だから怖いところですよ、芸能界は。先輩にも言われたんですよね。「テレビっていうのは、出続けてないとダメなんだよ。忘れられちゃうし、昔の人になっちゃうから」って。そうすると「出続けるためにどうしたらいいんだ」って考えちゃうわけですよね。それで60歳の時に「ああ、そうか」って気がつくわけですよ。

テリー なるほど。

三宅 で、そこから東京喜劇を作るための時間を増やすんですよね。だから今は「この東京喜劇をたくさんの人に見てもらうためにテレビに出る」っていう考え方に変わりましたね。

ゲスト:三宅裕司(みやけ・ゆうじ)1951年、東京都生まれ。1979年、「劇団スーパー・エキセントリック・シアター」結成。1984年、「三宅裕司のヤングパラダイス」(ニッポン放送)で若者から絶大な支持を集める。その後「テレビ探偵団」「三宅裕司のいかすバンド天国」(共にTBS系)、「THE夜もヒッパレ」「どっちの料理ショー」(共に日本テレビ系)などの人気番組のMCを務める。2004年、東京の喜劇“軽演劇”を継承すべく「伊東四朗一座」を旗揚げ、出演と演出を行う。2006年、自身が座長の「熱海五郎一座」を旗揚げ。2014年に新橋演舞場に進出し、以降、毎年公演を行う。6月2日から27日まで、「東京喜劇 熱海五郎一座 新橋演舞場シリーズ第11弾 黄昏のリストランテ ~復讐はラストオーダーのあとで~」公演。詳しくは松竹ホームページまで。

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