マリナーズは「日本人選手とのご縁」が本当に深いようだ。
ドジャース・大谷翔平が日本時間6月25日のナショナルズ戦で今季27本目の本塁打を放ち、これが日米通算300号アーチとなった。だが、アメリカ西地区の野球ニュースでは、大きく扱われていなかった。「ホームランの話題」に限って言えば、西地区のトップニュースは、マリナーズのカル・ローリーが主役である。今季のローリーは絶好調。大谷が27号を放つ前に、32本塁打を放っている。
32本塁打は両リーグトップ。ア・リーグの本塁打王ランキングでは、ヤンキースのアーロン・ジャッジを抑えている。ナ・リーグ1位は大谷であり、ローリーの量産体制は所属リーグが異なるのでタイトル争いには影響はなさそうだが、こんな見方もできる。
「ローリーが覚醒したきっかけは、昨年8月にダン・ウィルソン巡回コーチが監督に就任したことです。現役時代に捕手だったウィルソン監督は、正捕手の座を掴んでいたローリーをチームリーダーに押し上げ、その自覚を促しました」(メジャー関係者)
現役時代のウィルソン監督はイチローのチームメイトで、マック鈴木、佐々木主浩、長谷川滋利、木田優夫とバッテリーを組んでいる。「捕手が守備の要、配球の妙、チームリーダー」の考えを加速させたのは、こうした日本人投手との関係が影響しているという。
「ローリーは守備力にも定評のある捕手です。打撃に関しては昨季も好成績を残していますが、夏場に息切れしてしまいました。でも9月にどうにか復調し、打点100を記録しました」(メジャーリーグ・アナリスト)
捕手でシーズン3ケタ打点を記録したメジャーリーガーは2000年以降、ローリーを含めて6人しかいない。初の打撃タイトルを獲得するカギはスタミナと、9月に量産できるかどうかだ。しかし、9月のマリナーズの日程表を見ると、「大谷次第」であることが分かった。
日本時間9月28日からインターリーグ(交流戦)のドジャース3連戦が組まれているのだ。投手・大谷はア・リーグのエンゼルス時代にローリーと対戦しており、13打数2安打、打率1割5分4厘と、完全にカモにしていたのだ。
投手復帰した大谷と、「日本エキス」でバージョンアップしたローリーの再戦の行方や、いかに。マリナーズから本塁打王が出現するかどうかは、大谷の投球次第だ。
(飯山満/スポーツライター)