663日ぶりに、マウンドに背番号17の姿が戻ってきた。
ドジャースの本拠地で行われた6月17日(日本時間)のパドレス戦に、大谷翔平(30)は「1番・投手」で先発出場。1回28球を投げ、2安打1失点で3つのアウトを取って降板すると、そのまま打席に向かった。
23年9月に2度目となる右肘のトミー・ジョン手術を受けてからの投手復活劇について、大リーグ評論家の友成那智氏が解説する。
「必ずしも成功率が高くないと言われるトミー・ジョン手術ですが、復帰初登板で大谷は最速161キロを計測。シンカーやスライダーの球速も上がっていて驚きました。まさに丁半博打の賭けに勝ちましたが、ドジャースのトレーナーが優秀であることも大きい。エンゼルス時代に1回目の手術から復帰した20年7月26日のアスレチックス戦では、1死も取れずに5失点KOの屈辱を味わいました。しかし、ドジャースのトレーナーはトミー・ジョン手術に関するノウハウの蓄積があるので、成功を高める術を熟知していたのです」
見事な二刀流復活劇が始動したことで、デーブ・ロバーツ監督は先発ローテーション入りを明言。「投手・大谷」を見られる機会が増えそうだが、もともと復帰は7月17日のオールスター戦後を予定していた。しかし、ドジャースの投手陣は目下、14人が故障者リスト入りする緊急事態に。その結果、電撃復活が前倒しとなった形だが、この不測の事態にあってもスーパースターは己のポリシーを貫いたという。
「ロバーツ監督は負担を軽減するため、打順は1番から外す選択肢を伝えていました。それに大谷は『NO』と返答して1番打者を死守。さらに、復帰登板はメジャー最強打線のパドレスを相手に投げたいと、条件を出していたんです」(メジャー担当記者)
その上できっちり結果を出して、打者でも2安打2打点と大暴れしているのだから、もはや非の打ちどころがない。すでに視線は先に向けられているようで、先の友成氏はこう話す。
「ドジャースの目標は大谷の二刀流を核にして、ポストシーズンで優勝すること。昨季は憧れていた大舞台で打率2割3分と苦戦し、一刀流でも結果を残すことができなかった。それもあって、昨季に自己最多を記録した59盗塁も今季は、4月こそ精力的に走っていましたが、5月以降は2盗塁しただけで封印状態。極力ケガのリスクを避けて、投打両方で『秋男』になれるよう逆算して調整に入っています」
2連覇に向けて、1人2役をこなせる「主役」がポストシーズンの中心になることは間違いなさそうだ。