「コロナが明けてから相撲部屋の稽古見学は、外国人観光客向けのビジネスになっています。日本相撲協会公認で、旅行代理店と提携している部屋も増えてきました。例えばJR両国駅から徒歩1分の中村部屋は、1人1万8000円で朝稽古を見学させています。おいしい収入源ですよ」
こう相撲部屋のボロ儲け事情を語るのは、角界関係者である。早朝の稽古見学が好角家だけの嗜みだったのは昔の話。今では都内屈指の観光スポットの1つとして、訪日外国人にも認知されている。ところが、そんな相撲人気にかこつけて、“賽銭箱”さながらの集金システムを導入した部屋があるというのだ。
「錣山部屋では、稽古場に『チップボックス』が設置されました。稽古見学する外国人観光客に写真撮影などのファンサービスをして、その対価として“お気持ち”を払わせているのです。毎週末に金額を集計して幕下以下の力士だけで分配。1人あたり5000〜1万円の分け前にあずかっているようです」(前出・角界関係者)
本場所ごとの「場所手当」しか収入のない幕下以下の若い衆にとっては、貴重な小遣い稼ぎになっているようだ。
「錣山部屋は先代親方(元関脇寺尾)時代の後援者がどんどん離れている。もらえるご祝儀の絶対数が減っていますからね」(角界OB)
とはいえ、ファンサービスに見返りを求めるのは角界の慣例から見てもちょっとおかしいのでは‥‥。
「巡業を観戦するのにチケットこそ購入しますが、会場内で力士に写真やサインを求めても料金は発生しませんよね? 先代の遺族も『みみっちいことをして』と呆れ返っているといいます」(前出・角界関係者)
いったい、いかなる道理で導入されたシステムなのだろうか─。錣山親方(44)=元小結豊真将=に直撃すると苦笑いを浮かべながら応じてくれた。
チップボックスの設置は、旅行代理店と相撲部屋の間に入る「アテンダーの発案だ」と前置きして、集めたチップの行き先については、
「力士たちで分配しています。とはいえ、大した金額が集まるわけじゃありません。1回の稽古見学で、各自に数百円を分配するほどですから」
いずれにせよ、相撲協会への許可申請は必要ではなかったのか、厳格な性格で知られていた先代なら許さなかったのではないか。見解を聞いてみたところ、
「そうかもしれません。他の部屋でもやっていると風の噂で聞いていたので、特段報告することでもないと認識していました。あまりお金を持っていない若い衆のために少しでも足しになればとウチもやっていいのかと思ったのですが、こうやって取材されたので、(相撲協会に)相談することも検討します」
先代同様に希代のガチンコ力士だった親方は、どんな決断を下すのだろうか。