日本人メジャーリーガーの動向を追うライトなメジャーリーグファンにとって、まさに青天の霹靂だろう。今季の前半戦で最もホームランを打っている選手、それは大谷翔平でもライバルのアーロン・ジャッジでもない。シアトル・マリナーズの正捕手カル・ローリーだった。
6月24日現在、32本塁打とジャッジに4本差をつけ、ア・リーグの本塁打王争いを独走。これはオールスター前の捕手としての本塁打記録を更新し、さらにスイッチヒッターとしても歴代最多となっている。メジャーリーグライターによれば、
「メジャー5年目の28歳とまだ若いですが、2024年までに3年連続でシルバースラッガー賞(ポジション別の最優秀打者)候補になったほどの逸材です。昨年は34本塁打で、キャリア初の100打点をマークしている。捕手としても一流で、昨年はア・リーグのゴールドグラブ賞を受賞し、その中で最も守備が優秀だった選手(各リーグ1名)に贈られるプラチナ・ゴールドグラブ賞まで受賞しました。昨年のマリナーズは先発防御率が全球団1位の3.88で、これにはローリーの好リードが大きく影響しました」
日本のファンにまで届く知名度こそないものの、ローリーはかなりの実力者として知られているのだ。
そんなスラッガーは、マリナーズの本拠地である西海岸北部のシアトルとは正反対に位置する、東海岸南部のノースカロライナ州生まれ。父親が大学野球出身、叔父が元マイナーリーガーという野球一家に育った。高校時代にオールアメリカ代表に選出され、フロリダ州立大に進学。1年時からレギュラーとなり、ドラフト3巡目でマリナーズに指名されている。
2022年にはマリナーズにとってイチロー移籍初年度の2001年以来、21年ぶりのポストシーズン進出を決定づける代打サヨナラ本塁打を放ち、大喝采を浴びた。いわゆる「打てる捕手」としての評価が高く、これまでも捕手の打撃記録を塗り替えている。
「ですが、今年これほど打つとは、誰も思っていなかった。前半戦だけで、キャリアハイだった昨年の本塁打数とほぼ同本数ですから。打撃向上の理由として挙げられるのは、選球眼がよくなっていること。それは四球の増加と三振の減少によく表れており、おかげで課題とされた打率は昨年の2割2分から2割8分にまで上がっています。このままいけば、大谷やジャッジのように、年間50本塁打以上の成績を残せるかもしれません」(前出・メジャーリーグライター)
大谷にとっては、本塁打王を争う「第2のライバル」である。