しょせん都議候補は「捨て石」にすぎなかったのだろうか。
6月22日に投開票が行われた東京都議選。過去最低の議席数となった自民党とともに、元安芸高田市長の石丸伸二氏が設立した「再生の道」の惨敗ぶりが取り沙汰されているが、同様に議席ゼロに終わったのが「日本維新の会」である。
現職だった松田龍典氏を含む、6人の立候補者が全員落選。それどころか、どの候補者も次点にもかすらないレベルの票しか得られなかった。もともと現職1名の劣勢だったため、6月14日と15日の土日には街頭演説に吉村洋文大阪府知事を応援弁士として投入したものの、効果はなかったようである。
それも、やむなしだ。というのも、吉村府知事が喧伝したのは社会保険料にまつわる国政の問題がメイン。松田候補が訴える「都民税の減税」がオマケ扱いだった感は拭えない。
振り返れば、6月14日午後にJR蒲田駅前で行われた演説でも、自身の給与明細をひけらかして聴衆に訴えかけていた。
「住民税が引かれますよね。松田さんが伝える住民税」
とだけサラッと話すと、
「健康保険料と厚生年金で引かれる金額が大きい。例えば年収350万円の所得の人。社会保険料はいくら引かれていると思いますか。その金額なんと、事業者負担と合わせたら100万円です」
具体的な数字を出して、社会保険料の過剰負担を強調。その後は話題を医療費へと転換して、
「1985年、僕が10歳ぐらいの頃は10兆円ぐらいだったのが、今47兆円ですよ。今後どんどん増えて、2040年には80兆円になります」
現役世代の危機感を煽ったのである。
これでは完全に都政および都議候補者が置き去りにされたと言っていい。なにしろ演説そのものが、自民党が参議院選の公約に掲げている『1人2万円の現金給付』を批判し、国の社会保障制度の持続可能性に疑問を投げかける内容に終始。まるで国政選挙を戦っているような話しぶりだったのだ。
「あとは『大阪・関西万博』のコマーシャルぐらいでしたね。あくまで本番は、7月に予定されている参院選なんでしょう」(演説を聞いたジャーナリスト)
演説後には選挙カーから降り、アイドルの握手会さながらに、行列に並ぶ有権者と記念写真に応じた吉村府知事。ここでも都議候補はオマケ扱いされていた。