阪神のリードオフマン、近本光司が今季も安定感抜群のプレーでチームを支えている。交流戦最終カードのソフトバンク戦では1勝2敗と敗れはしたものの、2試合でマルチ安打を放ち、攻守にわたって存在感を発揮した。ここまでの成績は70試合に出場し、リーグ5位となる打率2割8分5厘、3本塁打、21打点、OPS.716(6月24日現在)で、1番打者としての役割を十分に果たしている。
昨オフの契約更改では複数年の大型契約提示を断り、推定3億7000万円の単年契約を選択。「来季もこの戦力で優勝を目指したい」という言葉からは、市場価値を自ら確認しつつ、虎一筋を貫く覚悟がうかがえる。
近年のFA市場では、権利取得前年に単年契約を結び、翌年に大型契約を結ぶパターンが定番になっている。事実、昨オフも阪神・大山悠輔が単年契約後にFA権を行使しながら、最終的に残留を決断している。今季中に国内FA権を獲得するとみられる近本には「淡路島育ちの近本なら、地元愛から阪神に残ってくれるのでは」という期待感が根強い。
そんな折、近本は自身のインスタグラム・ストーリーズで「兄が淡路島で日本料理のお店を始めます。良かったらぜひ」と紹介。生後2ヵ月で阪神・淡路大震災を経験し、「兄のそばに倒れたタンスがズレていたら命が…」という家族の証言を胸に「伝えていく使命を感じる」と語っていた今年1月のスポーツ紙インタビューも、近本の強い郷土愛を物語っていた。
さらに昨年は、淡路島や離島支援を目的とした一般社団法人「LINK UP」を設立。地元の子供たちを観戦に招き、企業協賛で地域振興にも取り組むなど、「故郷想い」がプレー外でも色濃く表れている。
FA権取得を目前に控えた今オフ市場で、近本が最も注目度が高いのは言うまでもない。身長171センチの小柄なリードオフマンは、リーグ5度の盗塁王、最多安打1度(2021年)、外野手部門ゴールデングラブ賞4度の受賞を誇る、球界屈指の能力を持つ。と同時に、長年のフル出場で証明された、タフネスぶりを兼ね備える。もしFA宣言すれば昨年の大山同様、巨人が獲得に動くのはほぼ確実だろうが…。
オフの去就には、一層の関心が集まることだろう。
(ケン高田)