スポーツ
Posted on 2025年09月02日 14:00

【WBC】ネトフリ独占問題で「他スポーツ方式」が通用しない「無料配信」への高い壁

2025年09月02日 14:00

 来年3月のワールド・ベースボール・クラシック(WBC)の日本国内での独占放送権を握ったネットフリックス。NPB(日本野球機構)実行委員会では、パ・リーグの楽天・井上智治氏が「できるだけ多くの方に見てもらいたい。一番いいのはテレビの地上波ですが、駄目ならネットの無料配信」と希望を示した。ネットフリックスが応じるかは不透明だが、ファンの間では「もし無料で見られるならどんな形か」という憶測が広がっている。

 スポーツ配信の世界には、すでに「序盤を無料で見せ、佳境を有料化する」モデルが存在する。日本の格闘技イベントRIZINでは、オープニングや第2試合までを公式YouTubeやXで無料配信し、その後のメインカードはPPVに切り替える例があった。序盤で関心を引き、盛り上がる局面で課金へ誘導するパターンだ。また今年のツール・ド・フランスでは、J SPORTSが各ステージ冒頭の約1時間をYouTubeで無料配信し、その後は有料に切り替え、さらに第1・第7ステージは全編無料とする仕組みを導入した。実際に「序盤無料・後半有料」が成立した明確な前例である。

 では、これを野球に応用するとどうなるか。極端な仮説として「4回まで無料、5回以降は有料」という方式が浮かぶ。序盤を誰でも見られるようにし、中盤から課金対象にすれば理屈は立つ。しかし野球やサッカーは、試合全体を通じて展開される競技だ。試合の流れが大きく動き始める局面で視聴が途切れてしまえば、「ここからが一番面白いのに」と多くのファンが不満を抱くのは目に見えている。

 むしろ現実的なのは三つのシナリオだ。第一に、開幕戦や日本代表の初戦といった特定試合を無料公開する方式。第二に、本編はネットフリックス独占としつつ、ハイライトやダイジェストをSNSで無料公開して関心を広げる方法。第三に、大会を予選と決勝に分け、予選は無料、決勝は有料とする区切り方である。いずれも他競技で実績があり、野球に応用しても不自然ではない。

 今回ネットフリックスが独占することになった背景には、NPBが大会を主催するWBCI(ワールド・ベースボール・クラシック・インク)に出資していないため、国内放映権を自らコントロールできない仕組みがある。もし日本が主催側に加わっていれば、国内向けの放送ルールや収益配分について交渉する余地もあったはずだ。しかし現実には「参加国」の立場にとどまっており、日本側の交渉力は限られている。

 今回のWBCは、グラウンド上の戦いと同じように、放送のあり方とビジネスの構造が問われる舞台になるに違いない。

(ケン高田)

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