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Posted on 2025年09月22日 10:02

柳憂怜 映画の試写を観たら出演シーンがすべてカット/名バイプレイヤーが語る「我が役者バカ人生」

2025年09月22日 10:02

 TVerの見逃し配信数が驚異の2000万回を突破した今春の人気ドラマ「夫よ、死んでくれないか」(テレビ東京系)。中でも「刑事役の人が激シブ」と話題になったのが柳憂怜氏(62)だ。現在は俳優として数多くの作品に出演しているが、その原点は北野映画にあった─。

「やっぱり、たけしさん(北野武)が監督した2作目『3-4x10月』(90年、松竹)で主演をやらせていただいたことですね。『いちばん暇なヤツ』ということで僕が選ばれたんですけど、最初はイヤでしたよ。なので『無理です』と伝えたら『別にお前に期待してないから。おいしいものを食べさせてやるから』と言われました」

 83年に弟子入りして以降、バラエティー番組で活躍していたが、まさか映画で主演を張るとは、微塵も思っていなかった。

「最初の頃の北野組は台本はないに等しくて、一応、渡されるけど『現場で変わるから覚えないでください』と。僕はその台本すらもらえず、朝、現場に行くと、箇条書きされたA4サイズの紙を1枚渡されるだけ。たけしさんと一緒にコントをやらせてもらっていたので、その延長線だと思って演じていました」

 その後、Jホラー(日本のホラー)ブームの先駆者である中田秀夫監督の映画「女優霊」(96年、ビターズ・エンド)や「リング」(98年、東宝)、清水崇監督のビデオオリジナル版「呪怨」(00年、東映ビデオ)などで起用され、ひときわその存在感を発揮する。

「中田監督も清水監督も当時は若手で、スタッフにも僕らにも『チャレンジするぞ!』という気概があったように思います。僕はただ足だけは引っ張らないようにしないと、という気持ちでしたね。演技は苦手だと思っているし、だから集団の中で人に迷惑をかけるのがいちばんイヤなんです。それは今でも変わっていません」

 そもそも「お笑いがやりたい」という思いを持ち続けていたため、俳優としての野心は皆無だった。

「これで売れてやろうとか、いいところを見せようなんてまったくなかったです。ただ、かといって芸人として何十年もお笑いに携わっていないし、いまさら芸人だなんておこがましいなと思うし、俳優もおこがましい。何者なのか、よくわかりません(笑)」

 それでも俳優としてオファーが続くのは、求められている証だろう。

「ラッキーですよね。でも、うーん‥‥予算の少ない作品の場合、必然的に制作できる範囲は決まってしまいますよね。その中から選んでいただいているのは、ありがたいです」

 数多くの作品に携わっているものの、すべてが順風満帆というわけではない。

「映画の撮影を終えて試写を観ると『あれ!? 俺、出てないじゃん』ということが2回くらいありました。一緒に観ていた人に『ねえ、俺、どこに出てた?』って聞いちゃいましたもん(笑)。尺の問題か何かで調整しなきゃいけなくて、もう全部切っちゃえ、となるんでしょうね。それで『クレジットはどうしますか?残しますか?』って聞かれるんですよ。まあ、たけし軍団ですからね。何かやらかしてカットされたんだろうって思われているかもしれませんね(笑)」

 そんなホロ苦い過去がある一方、役者として打ち震えるような貴重な経験もあった。

「蜷川幸雄さん演出の舞台『十二人の怒れる男』(09年)に出させてもらった時の最終日だったかな。公演後、蜷川さんに『今回の役は柳にしかできなかった。お前にしかできない芝居だったね』と言われた時は、ちょっとうれしかったです。だって稽古中は『バカ! ヘンタイ!』みたいなことしか言われないんですもん(笑)」

 それ以降も「あゝ、荒野」や「下谷万年町物語」など、蜷川作品に出演することになる。

「蜷川さんは、ちゃんと芝居ができる役者“ではない人”もキャスティングするんですよ。外の人というか異物感というか。そういうのが好きだったんですね。で、僕は異物のほうだったわけです」

 テレビドラマでも「GTO」(98年、フジテレビ系)や「相棒」(17年、テレ朝系)など40作品以上に出演しており、春ドラマ「夫よ、死んでくれないか」のオファーは、主要キャストとして出演した映画「そして、優子Ⅱ」(23年、リアリーライクフィルムズ)の佐藤竜憲監督から「僕がメインで演出をする春ドラマにも出てほしい」と声がかかった。

「非常にありがたいですね。ただ、次もテレビドラマに出られるかと言ったら‥‥局しだいですよね。あんまりね、テレビの評判はよくないので。たけし軍団だから。昔からイメージがよくないから(笑)」

 現在、その軍団のダンカン氏と共演する映画「抗う者たち」(25年、トリプルアップ)が公開中だ。

「昔から知っている人の前で大マジメに芝居をするのはこっ恥ずかしいです。お互い『あいつちゃんと台本読んでるよ』って、笑っちゃうんですよね」

柳憂怜(やなぎ・ゆうれい)1963年4月8日生まれ、広島県出身。83年にビートたけしに弟子入り後「柳ユーレイ」としてバラエティー番組で活躍。映画「3-4x10月」で主演を務め、映画「女優霊」以降、Jホラーの常連になる。近年は石原さとみ主演の話題作「ミッシング」(24年、ワーナー・ブラザース映画)に出演。10月24日より映画「やがて海になる」(ムービー・アクト・プロジェクト)が公開予定。

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