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記事全文を読む→ホントーク〈稲村悠×名越健郎〉(2)中国人留学生はスパイなのか?
名越 今年の2月、中国籍の元主任研究員が「産業技術総合研究所」の研究データを中国企業に漏洩して、有罪判決になりました。中国による諜報活動の実情を教えてください。
稲村 「警察白書」によると、戦後日本で立件され、対日有害活動と認定された事件はわずか7件程度と多くありません。この「産総研の情報漏洩事件」も、関係者によると、加害者は中国国家から命令されたわけではなく、自分から自発的に情報を持ち出していた可能性が高い。ただ、海外の摘発事例に比べて日本の数が少ないのは、検知できていないだけという意見もあります。
名越 中国から日本への留学生はおよそ20万人で、年々増えています。中国人は日本人と見分けがつかないから探知も難しいでしょう。
稲村 その可能性はあります。ただ、日本にいる中国人が全部、共産党の手先でスパイだという意見も聞きますけど、あれはまったく正しくない。中国の諜報活動は当然組織化されていて、一般人を使うスキームは存在します。しかし、その一般人が悪意なく無意識に加担させられているケースも当然存在します。そのような悪意なき人たちをスパイと呼ぶのはただの差別であり、敵の活動を霧中に追いやるだけで、無意味です。
名越 04年、上海で外交官がハニートラップにかかったことに責任を感じて自殺した「上海総領事館員自殺事件」もありました。
稲村 非常に痛ましい事件です。中国では諜報活動に限らず、要人の接待に女性をあてがう招待工作も常用されます。民間企業の社員を接待するのは単純な接待である場合も多い。ハニートラップは高度な情報を持つ人間や意志決定権者が対象であり、工作の中で追い込むのです。
名越 では、女性をあてがうハニートラップについて詳しく教えてください。
稲村 情愛関係まで持っていき、それを暴露すると脅されるケースや、恋愛感情を利用して信頼を築いて自発的に情報を提供させるケースなどさまざまです。北京五輪で中国を訪れたイギリスのロンドン副市長は、ホテルのロビーで知り合った中国人女性と部屋で一晩をともにした際、お酒に薬を盛られて、目が覚めたらパソコンを盗まれていたという事件もあります。
名越 今、中国で逮捕されている日本人は17人いるようですが、そのうち9人は公安調査庁から報酬をもらっていたという報道がありました。こうした情報が表に出るのは、内部に中国のスパイが入り込んでいるのではないですか。
稲村 その指摘については、中国側の言質のみで他に証拠がないため何とも言えません。ただ、そのような真偽不明の言質が広がることで、日本の情報は活動が抑制される。つまり、中国の思うツボです。その情報を誰が流布しているのかは重要な視点です。
ゲスト:稲村悠(いなむら・ゆう)一般社団法人・日本カウンターインテリジェンス協会代表理事、FortisIntelligence Advisory株式会社代表取締役。1984年生まれ。大学卒業後、警視庁に入庁。刑事課を経て公安部捜査官として諜報活動の捜査に従事した経験を持つ。警視庁退職後は、不正調査業界で活躍。その後、大手コンサルティングファーム(Big4)にて経済安全保障対応に従事。
聞き手:名越健郎(なごし・けんろう)拓殖大学特任教授。1953年岡山県生まれ。東京外国語大学ロシア語科卒業。時事通信社に入社。モスクワ支局長、ワシントン支局長、外信部長などを経て退職。拓殖大学海外事情研究所教授を経て現職。ロシアに精通し、ロシア政治ウオッチャーとして活躍する。著書に「秘密資金の戦後政党史」(新潮選書)、「独裁者プーチン」(文春新書)など。
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