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Posted on 2025年11月29日 05:56

二宮清純の「“平成・令和”スポーツ名勝負」〈敵将も脱帽、大谷翔平「伝説の夜」〉

2025年11月29日 05:56

「ドジャース VS ブルワーズ」ナ・リーグ優勝決定シリーズ第4戦/2025年10月17日

 投打の二刀流で活躍するドジャースの大谷翔平が今シーズンのナ・リーグMVPに輝いた。ア・リーグのエンゼルス時代の21、23年、ドジャース移籍1年目の昨シーズンに続く4度目の満票選出となった。

 大谷の今シーズンの成績は、打撃では打率2割8分2厘、55本塁打、102打点、146得点、20盗塁。投げては6月に投手復帰後、47イニングを投げ、1勝1敗、防御率2.87、62奪三振。MLB史上初の「50-50」(55本塁打、62奪三振)も達成した。

 参考までに紹介すれば、4度のMVPは、バリー・ボンズの7度に次いで単独2位。ボンズはパイレーツで2度(1990、92年)、ジャイアンツで5度(93、01、02、03、04年)MVPに輝いているが、90年代前半の3度の受賞と、2000年代に入ってからの4度の受賞は趣を異にしている。

 というのも、もともとボンズは走攻守三拍子揃った万能型のプレーヤーだった。ところが、99年から筋肉増強剤を使用し始め、01年にはMLB史上最多となる73本塁打を記録し、8年ぶりのMVPに輝いた。

 7度のMVPのうち3度が筋肉増強剤使用以前、4度が使用以降。こうした事情を踏まえ、MLBの関係者からは、筋肉増強剤使用以降のタイトルについてはアスタリスク(*)を付けるべきだとの声も上がっている。

 よもや、00年以降の4度のMVPが取り消しになることはあるまいが、アスタリスクとは無縁の大谷のMVP4度選出は、もっと称えられていいはずだ。

 MVP選出の前日、大谷は「レジェンダリー・モーメント・オブ・ザ・イヤー」賞も受賞していた。和訳すれば「伝説的瞬間」賞だ。

 10月17日(現地時間)、ドジャースが3戦全勝と王手をかけて迎えたブルワーズとのナ・リーグ優勝決定シリーズ第4戦。舞台は本拠地ドジャースタジアム。

 この日、「1番投手兼DH」で先発出場した大谷は、打っては3本塁打3打点、投げては6回0/3を無失点、10奪三振の活躍で、チームを2年連続ワールドシリーズ出場に導いた。この活躍が認められリーグチャンピオンシップシリーズMVPに輝いた。

 伝説の3本を振り返ろう。まず1回。左腕ホセ・キンタナの内角スラーブをライトスタンド上段に叩き込んだ。

 スタジアムが興奮の坩堝と化したのは4回の2本目だ。右腕チャド・パトリックの内角カットボールを叩いた打球は、ライトスタンドの屋根を直撃する飛距離約143メートルの特大弾。ダイヤモンドを一周する大谷に「MVP」コールが降り注いだ。

 いかに、この一撃が衝撃的だったかは、チームメイトの反応を見れば明らかだ。20年にMVPに輝いたフレディ・フリーマンは、まるで未知の生物にでも遭遇したような表情を浮かべ、手で顔を覆った。

 同じく18年のMVPムーキー・ベッツは「彼はマイケル・ジョーダンだ!」と言って顔を上気させた。

 だが、この日の大谷パフォーマンスは、これでは終わらなかった。7回には右腕トレバー・メギルの内角ストレートを中堅左のスタンドに突き刺した。

 敗軍の将となったパット・マーフィー監督の試合後の一言が、全てを物語っていた。

「今夜、我々はただ負けただけではない。MLBの歴史の瞬間の中にいた」

二宮清純(にのみや・せいじゅん)1960年、愛媛県生まれ。フリーのスポーツジャーナリストとしてオリンピック、サッカーW杯、メジャーリーグ、ボクシングなど国内外で幅広い取材活動を展開。最新刊に「森喜朗 スポーツ独白録」。

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