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Posted on 2025年12月21日 10:01

ホントーク〈青野照市×魚住りえ〉(2)給料は新社会人の約6分の1だった

2025年12月21日 10:01

魚住 この本には青野さんがプロ棋士になるまでのご苦労やA級に昇り詰めるまでの過程をはじめ、対局料や個性的な棋士のお話、将棋連盟の内幕など、将棋界のことがすごくリアルに書かれています。

青野 去年引退したので、もうみんな書いちゃえ、と思いまして(笑)。

魚住 四段に昇格してプロになられてからも、もっと上にいかないと収入が増えない苦しさを綴られています。

青野 勝負の世界ですから当然ですけど、高度成長時代に棋士の給料はまったく上がりませんでした。私が四段になってもらった月給は1万3000円。昭和49年のことで、大卒の初任給は約8万円に上がっていました。

魚住 対局料も満額もらえないそうですね。

青野 対局料として給料の1割~2割を将棋連盟が預かっていました。これは、利息がついて20年後に戻ってくる制度です。子供の学費などに使ったり、かなり役立ちましたよ。

魚住 プロになられて変わったことはありますか?

青野 私はずっとメンタルが弱かったんです。段が上がる大一番になると、プロになれなかったら人生が終わってしまうというプレッシャーで震えてしまい、半分以上は負けていました。でも、四段に上がってからは負けても段が上がらないだけなので、精神的な余裕ができたせいか、昇級がかかった対局は全部勝ちました。

魚住 本来の実力が出せたんですね。将棋で負けてしまう時は、焦って指した時が多いそうですが。

青野 負ける原因の最も大きな理由は焦りです。逆に言うと、相手を追い込んで自滅させるのがいちばん簡単に勝てる方法です。柔道や剣道でも、スキがない相手に無理やり攻めていってもなかなか一本を取ることはできませんが、相手が焦って攻めてきたら、その力を使って倒すのがいちばん楽なんです。

魚住 豪傑だと思われた棋士はいらっしゃいますか?青野 升田幸三実力制第四代名人でしょうか。私は公式戦で1回、辞められる時に練習将棋で1回対局しただけですが。やはり棋譜を見ていると天才的で、ひらめきはすごいものがありました。

魚住 将棋の世界で学んだことで、実社会で役立つことを教えていただけますか。

青野 将棋では悪い手を指したと思っても、7対3で優勢だったのが 5対5に戻ったか、せいぜい4対6の形勢判断です。でも、その次の手がひどいと負けてしまいます。「しまった」と思って焦って指したその次の手が、本当の敗因になります。例えば食品の偽装事件は、社会的にも叩かれて当たり前ですが、その後に何をしたかが重要で、その企業が立ち直るか潰れるかの境い目になります。

ゲスト:青野照市(あおの・てるいち)1953年、静岡県焼津市生まれ。68年、廣津久雄九段の弟子となり4級で奨励会入会。74年、四段に昇段しプロ棋士に。82年、第41期順位戦でA級に昇級。89年、第37期王座戦でタイトル初挑戦。24年、現役引退。通算成績は800勝899敗。日本将棋連盟の理事を長年務め、将棋の海外普及にも尽力し、11年に「外務大臣表彰」を受けた。

聞き手:魚住りえ(うおずみ・りえ)大阪府生まれ、広島県育ち。慶應義塾大学文学部卒。1995年、日本テレビにアナウンサーとして入社。報道、バラエティー、情報番組などで幅広く活躍。04年に独立し、フリーアナウンサーとして芸能活動をスタート。30年にわたるアナウンスメント技術を生かした「魚住式スピーチメソッド」を確立し、現在はボイス・スピーチデザイナーとしても活躍中。

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