社会
Posted on 2026年01月17日 10:00

山上徹也被告 戦後最大の安倍元総理暗殺事件の後始末「1293日の暗黒」(1)白髪交じりの長髪姿

2026年01月17日 10:00

 2022年7月8日昼前、近鉄・大和西大寺駅前で参院選の街頭演説中だった安倍元総理は背後から手製の銃により発砲された銃弾2発を受け死亡した。戦後最長の在任期間を誇る首相の暗殺事件は「政治とカルト宗教」という“パンドラの箱”を開け放ち、列島を震撼させた。事件から判決までの1293日、山上被告が抱き続けた漆黒の闇に迫る。

「上下が黒のスウェット姿で、体型は太ったというよりも引き締まっているなという印象でした。後ろに束ねた白髪交じりの長髪が時間の経過を表していたように感じました」

 法廷に現れた山上徹也被告(45)の印象をこう振り返るのは、20年以上にわたって旧統一教会問題を取材しているジャーナリストの鈴木エイト氏だ。

 山上被告が安倍晋三元総理を銃撃して殺害した事件の初公判が奈良地裁で行われたのは、25年10月28日のこと。そこから12月18日の結審までに計15回の公判を重ねた。

「初公判で山上被告は、ずっと左手をこめかみに当てて顔半分を隠していました。70席の傍聴席から注がれる視線が気になっていたそうです。最初こそ、その感情の乏しい表情から、ふてくされているようにも見えましたが、入廷した裁判員にきちんと一礼したり、裁判資料をじっくり読み込んだりと、山上被告なりに真摯に裁判に向き合っている姿を見せていました。山上被告は自分の考えの言語化に時間のかかるタイプで、聞かれたことに間を置いて正直に返答する印象でした」(鈴木氏)

 殺人などの5つの罪について、起訴内容を「すべて事実です。私がしたことに間違いありません」と認めた山上被告。ところが、翌29日の第2回公判まではみずからの凶行を現実のものと捉えきれていない向きもあったという。

「山上被告の犯行を撮影した映像が法廷で流れました。それを見て、みずからの放った銃弾で命を奪ったことに『リアリティを感じられた』と話していました。新聞報道で自分の事件を認識していても、映像で客観的に見る機会がなかったのです。そこから、より内省を深めたように思えたのが、12月3日の第13回公判です。刑事事件の被害者参加制度で安倍元総理の妻・昭恵さんが出廷したのです」(鈴木氏)

 初めて被害者遺族と対面して悔悟の念が湧いてきたのだろうか。検察側から安倍元総理を狙うに至った理由を尋ねられると、「本筋ではない」と返答したのだ。さらに、翌4日の第14回公判では、

「安倍元首相のご家族には何の恨みもありません。私も肉親を亡くした経験があるので、弁解の余地はありません。非常に申し訳ないことをしたと思います」

 と、謝罪の念を口にした。しかしながら、教団への復讐心を安倍元総理に転じた理由に関しては、こう明言している。

「第12回公判で、裁判官にも安倍元総理を標的にした理由を尋ねられ、21年に安倍元総理が旧統一教会の友好団体『天宙平和連合(UPF)』に送ったビデオメッセージで、韓鶴子総裁(82)を礼賛したことに、『絶望』『危機感』『困惑』『失望』『嫌悪感』『敵意』といった感情を抱いたと明かしていました。教団を『まともな団体』だと認定するような事態に危機感を覚えたのは事実でしょう。検察側は経済的困窮をいちばんの犯行理由に挙げており、安倍元総理が標的になるのは『飛躍している』としていますが、むしろ山上被告が直面した『絶望感』が安倍元総理に向くのは一本筋が通っているように思えます」(鈴木氏)

 事件から封印されていた暗黒の一片を垣間見せたのだ。その複雑な感情は裁判の最終日にも見て取れた。

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