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記事全文を読む→映像ディレクター・佐々木敦規の「お台場ハチャメチャ青春記」〈第7回〉(2)ひな壇トークは“パス回し”
「アイドル道」は実験的な番組だった。テレビ出演経験がほぼゼロの“原石中の原石”を集めて1つの番組を作る。当時としても画期的な試みだった。
「今みたいにYouTube もSNSもなく、『メディアに出る』といえばテレビしかない時代です。無名の新人はテレビで活躍する場がないので、各事務所はいかにしてテレビに出すかに必死でした。でも、タレント側はいざテレビに出ても『何を求められて何をしたらいいか』『どんな表現をしてどんな表情をしたらいいのか』がわからない。どこかで経験を積む場が必要だったんです」
「アイドル道」を作ることがどれほど難しいかを、佐々木は番組を作りながら痛感したという。
「グラビアチームで『女だらけの水泳大会』をしたことがあるんです。司会はおりも政夫さん、ゲストに岡本夏生、場所は福島のスパリゾートハワイアンズ。朝、フジテレビに集合して女の子たちに『今日は水泳大会をやるから、爪跡を残すように頑張って』と話して、いざ出発となったら1人だけ来ないんですよ」
現在は引退した某グラビアアイドルだった。
「『私行きたくない。できる自信がない』って泣くんです。その時は僕らバラエティー路線から入ってるから、『せっかくテレビで頑張れるチャンスなのに、なんで嫌なんだろう?』と思ってしまっていました。オーディションで選んだメンバーだし、半年間かけて育てようとしてたので、離脱はさせたくないから説得して連れていきました。でも彼女は、テレビバラエティーを覚えるとめちゃめちゃいい味を出すようになったんですよ」
この一件で佐々木は初めて気づいた。
「水着になって写真を撮られることには慣れていても、カメラの前で『楽しくおもしろく番組を盛り上げて』と言われると、何をしていいかわからない。中には拒否反応を示す子もいるんですよね」
それ以降、佐々木は通常のバラエティー番組とは違う対応を心がけた。
「僕は『その子の“素”をおもしろがる』ことを心がけていて、MCのやるせなす(第1、2シーズン担当)やアンタッチャブル(第3、4シーズン担当)と、『この子はツッコミすぎると対応できないから自然な部分を笑かしていこう』とか『この子はガンガン言って大丈夫。あの子は難しいからやり方に気をつけて』と、よく話し合いました」
同時に、出演するグラビアアイドルや女優の卵たちには、丁寧に“バラエティーの作法”を教えた。
「ひな壇トークはパス回し。でも間違ったパス回しをしたり、若い女の子がやりがちな身内ウケの話をすると、視聴者に伝わらない。だから『あの時はこっちにパスを出すべきだよ』とか『あの身内話は誰もわからないよ』と伝えました。怒った記憶はないけど、収録が終わったあとには反省会をして、『こういう時はこう対応しようか』と細かく教えました」
何も知らないグラビアアイドルや女優の卵と真摯に向き合い、バラエティーで通用するタレントにするべく奮闘する佐々木を傍で見ていたのが、当時の沢尻エリカのマネージャー、川上アキラだった。
「のちに『ももいろクローバーZのライブ演出をしてほしい』とオファーをいただいたのは、『アイドル道』で僕が彼女たちと向き合っている姿を川上さんが見てくれていたからなんです。どこで縁が繫がるかわからないですよね」
佐々木敦規(ささき・あつのり)1967年生まれ。演出家・映像ディレクター。フィルムデザインワークス取締役。「ビートたけしのお笑いウルトラクイズ!!」「とんねるずのみなさんのおかげでした」「IPPON GP」などのバラエティー、K-1やプロレスなど格闘技番組の演出を経て、ももクロのステージ演出を手掛ける。
取材・構成/茂田浩司(ライター&編集者)
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