スポーツ

あのスターを生んだ夏の甲子園(8)由規が打ち立てた「最速記録」「17奪三振」の快投

20160814yoshinori

 今シーズン右肩の故障から復活し、1786日ぶりの勝利を挙げたヤクルトの由規。故障前の10年には当時、日本プロ野球史上最速記録となる161キロをマークするなど、日本球界が誇る速球派の投手である。その剛球伝説の始まりは07年夏の選手権。2回戦でマークした夏の甲子園史上最速155キロが日本中を驚愕させた。だが、実はその1年前にすでに実力の一端を示していたのである。

 06年の夏の選手権。初戦で徳島商と対戦した仙台育英は由規の好投で、5-1で快勝するが、なんと宮城県大会の決勝、東北との引き分け再試合から中5日の日程だった(しかも決勝戦&決勝戦引き分け再試合を含む24回374球を投げ抜いていた)。それでも由規は疲れをものともせず、115球の完投勝利。しかも被安打5、11奪三振の快投だった。

 続く2回戦の日大山形戦では8回を投げて被安打7。自らのミスもあり6失点を喫してしまう。試合も3-6で敗れてしまったが、それでも13三振を奪ったところにその実力の片鱗が伺えた。

 3年生になった07年の春の選抜で再び由規は甲子園に帰ってきた。初戦の常葉菊川(静岡)戦は14奪三振の快投。だが、4回表の満塁のピンチで浴びたレフト前2点タイムリーが致命傷となり、1-2で惜敗。実は開幕前の練習試合で左手に全治2週間の重傷を負っていたのだが、怪我を感じさせない堂々たる投球に“夏こそは”の期待が高まったのだ。

 そして迎えた最後の夏。由規は甲子園に一つの伝説を打ち立てる。まず初戦の相手は強打が売りの智弁和歌山。2点をリードした6回表に智弁の2年生4番・坂口真規(現・巨人)にレフトスタンド中段へと突き刺さる同点2ランを浴びたものの、その次の打席では154キロで見逃し三振。力でねじ伏せ、見事にリベンジする。直後に打線が2点を勝ち越し。結局、由規は毎回の17奪三振の快投で、4-2で初戦を突破したのであった。

 続く2回戦。智弁学園(奈良)との一戦でその瞬間が訪れる。4回裏の投球の際に春夏の甲子園通じて最速となる155キロをマークしたのだ。とはいえ、試合は9三振を奪ったものの、5回裏に四球をきっかけにリズムを崩し、智弁打線に5安打を集中され、2-5で敗退。155キロの衝撃を残して甲子園を去って行ったのだった。由規は甲子園の直後に招集された日米親善試合で当時自己最速の157キロを計測。この年のドラフト1位候補としての価値をさらに高めたのである。

(高校野球評論家・上杉純也)

カテゴリー: スポーツ   タグ: , , , ,   この投稿のパーマリンク

SPECIAL

アサ芸チョイス:

    ゲームのアイテムが現実になった!? 疲労と戦うガチなビジネスマンの救世主「バイオエリクサーV3」とは?

    Sponsored

    「働き方改革」という言葉もだいぶ浸透してきた昨今だが、人手不足は一向に解消されないのが現状だ。若手をはじめ現役世代のビジネスパーソンの疲労は溜まる一方。事実、「日本の疲労状況」に関する全国10万人規模の調査では、2017年に37.4%だった…

    カテゴリー: 特集|タグ: , , , |

    藤井聡太の年間獲得賞金「1憶8000万円」は安すぎる?チェス世界チャンピオンと比べると…

    日本将棋連盟が2月5日、2023年の年間獲得賞金・対局料上位10棋士を発表。藤井聡太八冠が1億8634万円を獲得し、2年連続で1位となった。2位は渡辺明九段の4562万円、3位は永瀬拓矢九段の3509万円だった。史上最年少で前人未到の八大タ…

    カテゴリー: エンタメ|タグ: , , , |

    因縁の「王将戦」でひふみんと羽生善治の仇を取った藤井聡太の清々しい偉業

    藤井聡太八冠が東京都立川市で行われた「第73期ALSOK杯王将戦七番勝負」第4局を制し、4連勝で王将戦3連覇を果たした。これで藤井王将はプロ棋士になってから出場したタイトル戦の無敗神話を更新。大山康晴十五世名人が1963年から1966年に残…

    カテゴリー: エンタメ|タグ: , , , , , |

注目キーワード

人気記事

1
2軍暮らしに急展開!楽天・田中将大⇔中日・ビシエド「電撃トレード再燃」の舞台裏
2
水原一平が訴追されて大谷翔平の「次なる問題」は真美子夫人の「語学力アップ」
3
ボクシング・フェザー級「井上尚弥2世」体重超過の大失態に「ライセンスを停止せよ」
4
不調の阪神タイガースにのしかかる「4人のFA選手」移籍流出問題!大山悠輔が「関西の水が合わない」
5
「失策王&打率2割以下」阪神・佐藤輝明に持ち上がる「外野へ再コンバート」の劇薬