芸能

病魔と闘う荒ぶる役者たちの不屈秘話 「第1回・松方弘樹」(2)弘樹のイメチェンを図れ!

20161020j2nd

 渡哲也の病気降板を受け、NHK大河ドラマとして初の「途中で主演交代」の事態に見舞われた。74年の「勝海舟」である。メイン脚本家の倉本聰は、親友の中島貞夫に相談する。

「誰かいない?」

「弘樹ちゃんだったら都合つくかもしれないぜ」

 中島は66年の「893愚連隊」(東映)から94年の「首領を殺った男」(東映)まで、最も多くの松方主演作を撮った監督である。時代劇スターの長男として殺陣もできるし、いい意味で器用で、どこかトッポい色合いを持つ松方は、渡哲也の代役を十分にこなせると思った。

 本来が映画志向である松方はためらったものの、最終的には東映・岡田茂社長の意に沿う形で了承。付き人の勝野は、共演の江守徹や地井武男と飲み歩く楽しそうな松方の姿を見る。

 ただし、全話の終了後に松方は鋭く批判した。

「NHKはモノを作るところじゃない!」

 大河の主演という栄誉を、みずから捨てにかかるようだった。さらに、夫婦役で共演した仁科亜希子との不倫から再婚。そして「きつい一発」という流行語にもなった著書では、女たちとのベッドの様子をこれでもかとつまびらかにする。

 実は、一連の流れに“戦略”があったと中島は言う。

「大河で知名度が上がって、さあ、そこから弘樹をどうするかと日下部五朗プロデューサーと話した。ここは、やはりイメチェンやろうと。東映の宣伝部も協力して、あの『きつい一発』のような豪放な言い方をさせた。さらに前の奥さんとも別れて、一皮むけたね」

 東映に“凱旋”した松方に、どんな映画を用意するのか──。のちに松方が「世界最強の脱獄アクター」と評されるシリーズ第1作「脱獄広島殺人囚」(74年)であった。東映の狙いはただ一点、これまでにない新しい題材だった。

「公開が12月7日ということは、正月映画の前の穴埋め的な時期。ところが、これが予想外の大ヒットになって、東映の内部でも驚きの声が上がった。松方弘樹という色気も華もあるキャラクターが、ようやく客を呼べる題材に巡り合えたね。すかさず『暴動島根刑務所』(75年)、『強盗放火殺人囚』(75年、監督は山下耕作)と続編が作られたから」

 中島は、この時代の東映を支えていたのは、松方と渡瀬恒彦の若いエネルギーだったと感謝する。もともと演技力には定評がある松方だが、さらに目を見張ったのは、オールスター大作の「日本の首領 野望篇」(77年)でのこと。

「大学出のインテリヤクザという役どころも難なくこなし、さらに実力派の女優・岸田今日子と“男と女”を感じさせる芝居を堂々とこなした。弘樹ちゃんのことはずっと見ているけど、あの芝居の成長ぶりは、思わず『おおっ!』とうなったね」

 一方で仁科との再婚後も「きつい一発」は収まらない。海外ロケには日数分のコンドームをスーツケースに詰めさせ、地方の愛人宅から「新幹線で着替えを持って来い」と告げる。いずれも夫人である仁科に対してであった‥‥。

カテゴリー: 芸能   タグ: , , , ,   この投稿のパーマリンク

SPECIAL

アサ芸チョイス:

    ゲームのアイテムが現実になった!? 疲労と戦うガチなビジネスマンの救世主「バイオエリクサーV3」とは?

    Sponsored

    「働き方改革」という言葉もだいぶ浸透してきた昨今だが、人手不足は一向に解消されないのが現状だ。若手をはじめ現役世代のビジネスパーソンの疲労は溜まる一方。事実、「日本の疲労状況」に関する全国10万人規模の調査では、2017年に37.4%だった…

    カテゴリー: 特集|タグ: , , , |

    藤井聡太の年間獲得賞金「1憶8000万円」は安すぎる?チェス世界チャンピオンと比べると…

    日本将棋連盟が2月5日、2023年の年間獲得賞金・対局料上位10棋士を発表。藤井聡太八冠が1億8634万円を獲得し、2年連続で1位となった。2位は渡辺明九段の4562万円、3位は永瀬拓矢九段の3509万円だった。史上最年少で前人未到の八大タ…

    カテゴリー: エンタメ|タグ: , , , |

    因縁の「王将戦」でひふみんと羽生善治の仇を取った藤井聡太の清々しい偉業

    藤井聡太八冠が東京都立川市で行われた「第73期ALSOK杯王将戦七番勝負」第4局を制し、4連勝で王将戦3連覇を果たした。これで藤井王将はプロ棋士になってから出場したタイトル戦の無敗神話を更新。大山康晴十五世名人が1963年から1966年に残…

    カテゴリー: エンタメ|タグ: , , , , , |

注目キーワード

人気記事

1
JR東日本に続いて西と四国も!「列車内映像」使用NG拡大で「バスVS鉄道旅」番組はもう作れなくなる
2
大谷翔平が「嘘つき」と断言した元通訳・水原一平の潜伏先は「ギャンブル中毒の矯正施設」か
3
【ボクシング】井上尚弥「3階級4団体統一は可能なのか」に畑山隆則の見解は「ヤバイんじゃないか」
4
リストラされる過去の遺物「芸能レポーター」井上公造が「じゅん散歩」に映り込んだのは本当に偶然なのか
5
舟木一夫「2年待ってくれと息子と約束した」/テリー伊藤対談(3)