芸能

松本零士VS槇原敬之「盗作バトル」裁判の「悪すぎる後味」/壮絶「芸能スキャンダル会見」秘史

 今年2月に亡くなった、日本を代表する漫画家・松本零士氏の姿を最後に目にしたのは2016年5月31日、東京・新宿村スタジオで行われた、松本氏原作の「キャプテンハーロック~次元航海~」の記者会見だった。「キャプテンハーロック」は初舞台化とあり、登壇した松本氏はこう語った。

「自分の作品をこうして舞台化していただけるのは、本当に嬉しいこと。描き始めた頃は夢にも思わなかった出来事で、今でも夢かと思っております。自分は夢の大航海に出たんだと。自分の夢の世界を一緒に飛んでるんだという気持ちなんです。皆さん、一緒に宇宙を旅しましょう」

 スタッフ、キャストに感謝して深々と頭を下げ、喜びをかみしめたのだった。ただ会見中、松本氏の口から繰り返される「夢」という言葉に、ふとあの騒動を思い出した関係者は多かったのではないか。

 その騒動が勃発したのは、2006年10月。歌手の槇原敬之がケミストリーに提供した楽曲「約束の時間」にある「夢は時間を裏切らない 時間も夢を決して裏切らない」という歌詞が、大きな問題になった。松本氏は自身の作品「銀河鉄道999」にある「時間は夢を裏切らない 夢も時間を裏切ってはならない」というセリフの盗作だと主張。メディアの取材に対し「槇原さんは盗作を認めて謝罪した」という旨の発言を繰り返した。これに槇原側が、真っ向から反論。2008年2月、槇原が損害賠償と著作権侵害ではないことの確認を求める裁判を、東京地裁に起こしたのである。

 だが同年12月26日に裁判所は、槇原に対する松本氏の行為は名誉棄損にあたると認定。松本氏が槇原へ220万円を支払うよう命じたのだ。当時の司法記者によれば、

「7月の口頭弁論には、槇原本人も出廷。『泥棒扱いされて不愉快だ』と厳しい口調で主張し、全面的に争う構えを見せました。10月の口頭弁論を経て、和解もありうる、との情報も一時は流れたのですが、槇原側が最後まで折れず、松本氏の完敗となったわけです」

 判決では松本氏の「槇原が盗作を認めて謝罪した」とする発言が事実と異なることが認定され、その時点で名誉棄損が成立。さらに著作権侵害についても、松本氏が損害賠償請求権を放棄したため、著作権侵害はなかった、つまりパクリではないことが法的に認められた。松本氏はひとつの事件で、2度も敗訴したことなる。漫画雑誌の編集者は、こう言っていた。

「苦労人である松本さんは男気があり、むろん創作者の生みの苦しみも熟知していました。一方、日本漫画協会の著作権部長の任にあったことで、著作権についてはこと、厳しい考え方を持っていた。ただ、双方のファンにとっては、どちらが勝っても負けても、結局は後味の悪い結末になったことでしょう」

 作品の類似性を含め、著作権問題に大きな一石を投じる騒動だったのである。

(山川敦司)

1962年生まれ。テレビ制作会社を経て「女性自身」記者に。その後「週刊女性」「女性セブン」記者を経てフリーランスに。芸能、事件、皇室等、これまで8000以上の記者会見を取材した。「東方神起の涙」「ユノの流儀」(共にイースト・プレス)「幸せのきずな」(リーブル出版)ほか、著書多数。

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