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“老活のススメ”スペシャル対談「弘兼憲史×加藤一二三」(4)人生の楽しみはこれから!?

弘兼 加藤九段は14歳から77歳まで現役で活躍されました。例えば、70歳を過ぎてから、自身の老いを意識したことはありませんでしたか。

加藤 ありませんね。

弘兼 盤面を「読む」力も変わらない?

加藤 まったく。

弘兼 すごい。体力的にはどうですか。

加藤 どれだけ長い試合でも疲労困憊したことはないです。私の場合、体力や気力の限界で引退したわけではありません。将棋界の「制度」でいられなくなっただけですので、それがなければずっと戦い続けていたでしょう。

弘兼 確か、棋士で最年長でしたよね。

加藤 最高齢対局と最高齢勝利記録を持っています。

弘兼 そこまで元気でいられる秘訣はどこにあるのでしょうか。ちなみに、お酒やたばこは。

加藤 たばこは吸いませんし、お酒はたしなむ程度ですね。いろんな理由があるとは思いますが、まず信仰を持っていることは大きいと思います。どれだけ忙しくても1週間に1回はミサに行っています。

弘兼 なるほど。

加藤 あとは食事を3食しっかり取り、睡眠も取り、無理はしないことです。性格が前向きなこともよいのかもしれませんね。

弘兼 プラス思考ですね。

加藤 プロになってから、試合の前日に負けると思ったことは一度もありませんし、負けても自分が弱いからだとは思ったことはありません。

弘兼 常に「勝つ」ことを意識する、ということでしょうか。

加藤 そうです。トンネルの先には必ず明るい光が見えてくる、と確信しています。弘兼さんは、引退を考えたことはありませんか?

弘兼 私もないですね。出版社に「やめろ」と言われないかぎり、描き続けるつもりです。ただ、最近は目が弱くなってきて、1時間描いたら10分間休み、また1時間描くというようにしないと焦点が合わなくなりましたけどね(笑)。願わくは、藤子・F・不二雄先生のように、仕事机に突っ伏したまま死ぬことができればいいんですが。

加藤 なるほど、いい死に方ですね。

弘兼 棋士を引退されて以後、生活はガラリと変わったと思います。実際のところ、いかがですか。

加藤 楽しいですよ。

弘兼 今までとは違う仕事ですし、戸惑うこともありそうですが。

加藤 そもそも私は若い頃からテレビや絵画もたくさん観ているし、本や旅、音楽に歴史と、大好きなことがたくさんあるんです。苦手な数学と化学以外なら、何にでも対応できます。中でも私がいちばん得意なのは、歌ですね。

弘兼 ああ、昨年、歌も出されましたね。

加藤 古坂大魔王さんのプロデュースで「ひふみんアイ」という歌を出しました。これで紅白に出るつもりでしたが、歌ではかなわず、審査員で出ることになりましたが(笑)。

弘兼 いやいや、すごい活躍ですよ。

加藤 テレビの企画では指揮もしました。小学校1年生の時に指揮をした話をしたら、将棋の天才がベートーヴェンの曲をどのように振るか興味があると言われまして、ベートーヴェンの「運命」を3分間バージョンで指揮したんですよ。

弘兼 そうなんですか。

加藤 その後、「オペラはどうですか?」ということで、テレビの前で歌って、それも大成功でした。ヴェルディのオペラ「リゴレット」で歌われる「女心の歌」。あれは名曲ですよ。

弘兼 ああ、私も大好きな曲です。しかし、本当にいろいろ挑戦されているんですね。引退どころか、「人生のお楽しみはこれからだ」という感じですね。

加藤 はい。本の出版にも興味があって、詰将棋の本を書いてみたいんですよ。

弘兼 まだまだ好奇心旺盛ですね、本当に驚かされました。7年先輩の加藤九段がここまで元気なら、負けていられませんね。私も、うなぎを食べて頑張らないと(笑)。

■弘兼憲史(ひろかね・けんし)1947年、山口県生まれ。早稲田大学法学部卒。松下電器産業(現パナソニック)勤務を経たのち、74年に漫画家としてデビュー。現在、「島耕作シリーズ」や「黄昏流星群」を連載するほか、作家、ラジオのパーソナリティーとしても活躍中。「新老人のススメ」(小社刊)など著書多数。

■加藤一二三(かとう・ひふみ)棋士九段。1940年、福岡県出身。早稲田大学中退。第40期名人。仙台白百合女子大学客員教授。54年、当時の最年少記録となる14歳7カ月で史上初のプロ棋士となる。17年6月の引退まで、62年10カ月にわたりプロ棋士として活躍。00年紫綬褒章を受章。通算成績は2505戦1324勝1180敗1持将棋。現役引退時点で勝利数は歴代3位、対局数と敗戦数は歴代1位。近年は「ひふみん」の愛称でバラエティー番組など多くのメディアに出演。

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