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五木寛之×椎名誠「僕たちはどう死ぬるか」(3)ひっきりなしに70代が鬼籍に…

五木 昔は人生50年とか言ってたでしょう。いまはそれが倍になって、75歳からあと25年間も生きる可能性があるという。人生後半の4分の1、75歳から100歳までの間をどう生きるか、そしてその後に何が待っているのかとか。もう“老い”の時期を過ぎて、“死”ということを、わりと平静にしかも悲壮ではなく楽しげに考える時期にさしかかったのかなという気がしているんです。

椎名 この頃ひっきりなしに70代くらいの人たちが鬼籍に入ってて、そういうニュースに接すると、じわじわと責められているような気がして、ちょっと背筋がゾクゾクしますね(笑)。

五木 先ごろ(9月17日)、シャンソン歌手のシャルル・アズナブールのコンサートがNHKホールであったでしょう。90歳を超えているのに、その後には大阪で歌って、つぎはウクライナのキエフでコンサートをやると聞いてたんですが、フランスに帰国して間もなく10月1日に亡くなってしまった。ついこの間、元気にステージをこなしていたのに。死というものは、どこか遠くからじわじわと来るものではないんですね。吉田兼好法師が言っているように「死は前よりしも来らず、かねて後ろに迫れり」です。ある日突然に後ろから背中をポンとたたかれるようなものだと。そう考えると、ふだんから死の準備というか、心づもりというか、これを楽しみながらやっておかないといかんなあというふうに、最近思うようになった。

椎名 5年ほど前に『ぼくがいま、死について思うこと』(新潮社)というのを書いて、それ以来いろいろな“死”とか葬送などについての本をたくさん読んだりしているんですが、自分の死については、やはり実感がないんです。

五木 かつて上智大学のアルファンス・ディーケン先生や吉本隆明が『死の位相学』などの評論を発表したり、死について一時ブームになったりしたけど、いまぼくらの目の前にあるのは、そういう思想や哲学、形而上学的な問題としてではなくて、現実の問題としてあるんです。

五木寛之(いつき・ひろゆき):1932(昭和7)年、福岡県生まれ。作家。北朝鮮からの引き揚げを体験。早稲田大学露文科中退後、編集者、作詞家、ルポライターなどを経て、66年『さらばモスクワ愚連隊』で小説現代新人賞、67年『蒼ざめた馬を見よ』で直木賞。76年『青春の門 筑豊編』ほかで吉川英治文学賞。主な著書に、『朱鷺の墓』、『戒厳令の夜』、『風の王国』、『親鸞』(毎日出版文化賞特別賞)、『大河の一滴』、『人生の目的』、『運命の足音』、『他力』(英文版『TARIKI』は2001年度BOOK OF THE YEAR・スピリチュアル部門)などがある。02年菊池寛賞受賞。また『下山の思想』、『生きるヒント』、『林住期』、『孤独のすすめ』などのほか、最新刊に『七〇歳年下の君たちへ』。

椎名誠(しいな・まこと):1944(昭和19)年、東京生まれ。作家。79年『さらば国分寺書店のオババ』でデビュー。『哀愁の町に霧が降るのだ(上・中・下)』(81~82)、『あやしい探検隊』シリーズ(84年~)、『インドでわしも考えた』などの紀行文、純文学からSF小説、写真集など、幅広い作品を手がけている。90年に映画『ガクの冒険』を監督し、91年には映画製作会社「ホネ・フィルム」を設立して映画製作・監督として『うみ・そら・さんごのいいつたえ』(91年)、『あひるのうたがきこえてくるよ。』(93年)、『白い馬』(95年)などを製作。90年、『アド・バード』で日本SF大賞を受賞。『岳物語』『犬の系譜』(吉川英治文学新人賞)、『家族のあしあと』『そらをみてますないてます』などの私小説系作品も多い。

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