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記事全文を読む→伝説の「春のセンバツ対決」王者・大坂桐蔭をギリギリまで追い詰めた三重!
王者が追いつめられていた。
昨年春の選抜第90回記念大会の準決勝第2試合。三重対大阪桐蔭の一戦は2‐1と三重が1点をリードして9回裏、大阪桐蔭最後の攻撃を迎えていた。この年の大阪桐蔭は前年春の選抜王者として史上3校目となる春連覇を狙っての甲子園入り。もちろんV候補の大本命で初戦から伊万里を(佐賀)14‐2、明秀日立(茨城)を5‐1、花巻東(岩手)を19‐0と圧倒して堂々のベスト4進出だった。それがこの準決勝では8回を終わって今大会初めてとなる追う展開。まさかの状況に、明らかに焦りがあった。
最初に試合が動いたのは3回表。三重は大阪桐蔭のエース・柿木漣(北海道日本ハム)に対し、9番・井上裕斗、1番・梶田漣が連打し、1死一、二塁のチャンスを作ると2番・浦口輝がセンターオーバーの適時三塁打で2点を先制。投げてはエース・定本拓真が6回裏に大阪桐蔭6番の山田健太にレフトスタンドへ飛び込むソロアーチを打たれたものの、それ以外は強打の大阪桐蔭に3安打しか許さない。140キロを超える直球で大阪桐蔭自慢の左バッターの内角を果敢についたかと思えば、スライダーやフォークも駆使。さらに時折交ぜる100キロ台のスローカーブも効果的に決まった。王者・大阪桐蔭を完全に手玉に取っていたのである。
だが、土壇場の9回裏、眠っていた王者がついに目覚める。5番・根尾昴(中日)が四球で出塁。6番の山田は送りバント失敗の捕邪飛に倒れるも、7番・石川瑞貴が粘って左前安打でつなぐ。そしてこの1死一、二塁から8番の小泉航平が執念の右前適時打を放ち、とうとう同点に追いついたのだ。
試合はそのまま延長へ。三重は定本が続投。大阪桐蔭は5回から登板した2番手の根尾がキレのある直球やスライダーでこの12回までの8イニングを被安打4の無失点。二塁を踏ませない力投を見せる。この大会から12回を終わって同点の場合は次の13回の攻撃からタイブレーク制度が導入されることになっていた。今大会、ここまで5試合の延長戦があったもの、すべて10回で決着。この試合が初めてのタイブレークとなる。満員の甲子園球場場内にはそんな予感が漂い始めていた。
注目の12回裏。大阪桐蔭は1死から2番・青池斗舞がショートゴロエラーで出塁する。だが、続く3番のキャプテン・中川卓也が三振に倒れ、二死。いよいよタイブレーク突入の色が濃くなってきた。ここで打席に入ったのが、この日、定本の前に全くタイミングが合わずここまでの5打席でノーヒットに抑えられていた4番・藤原恭大(千葉ロッテ)。そんな藤原に大阪桐蔭の西谷浩一監督は「ここまで考え過ぎなので、とにかく振っていけ」とアドバイス。これで藤原の迷いが消えたのである。狙い球を直球に絞ってフルスイング。低めの初球を左中間へと運んだ。そしてこの打球がワンバウンドでフェンスに当たり、跳ね返らずにそこに留まる。一塁から青池を生還させるサヨナラ適時二塁打となり、3‐2。甲子園初のタイブレーク制度が適用される寸前での劇的決着となったのである。試合後には「やっと4番の仕事ができた」と笑う藤原の姿があった。
大阪桐蔭は翌日の決勝戦も智弁和歌山を5‐2で下し、史上3校目の選抜連覇を、さらに夏の選手権も制して史上8度目、同一校としては初となる史上2度目の春夏連覇を達成することとなる。“高校野球史上最強チーム”ともいえるが、そんな大阪桐蔭を昨年の春夏の甲子園で最も追いつめたのがこの三重だったのだ。
(高校野球評論家・上杉純也)=文中敬称略=
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