政治
Posted on 2020年04月30日 09:55

歴代総理の胆力「宇野宗佑」(2)「文人政治家」としての高評価

2020年04月30日 09:55

 宇野は総理としては失態で幕を降ろしたが、一方で、「文人政治家」としては政界では聞こえていた。

 シベリア抑留当時の体験を書いた「ダモイ・トウキョウ」ほか、「中山道守山宿」といった十指に余る著作もある“作家”の一方、自作句集がある“俳人”でもあったのだった。

 また、ピアノ、ハーモニカは玄人はだしで、外相時代、外国賓客に自らハーモニカを吹いてサービス、これは好評であった。さらに、書もよくし、カラオケもなかなかうまかった。

 大正生まれ人間としてはマレな“マルチ人間”の多趣味はまだあり、麻雀、ダンス、剣道は正真正銘の五段、人形の収集はじつに2万5000体、自ら器用に郷土人形の制作もやるといった器用さだった。逆に言えば、この「器用さ」が命取りになったとも言えたのだった。

 振り返って、宇野は総理になる前「演説の達人」との声が高かった。なるほど、総理になった直後の所信表明演説は「世界に貢献する日本」を目指すとした格調の高さが評価され、その中身は随所に「文人政治家」らしく教養を感じさせるものがあった。

 この所信表明演説があったその日の夜のテレビ朝日「ニュースステーション」で司会の久米宏が演説を評価し、「この政権は大化けする可能性がある」と唸ったものでもあった。芸者とのスキャンダルは、その直後に一挙に広まったというものだった。

 俳句の号は、「犂子(れいし)」。その句集「宇野犂子集」には、神楽坂芸者との逢瀬をホーフツさせるかのような、次のような粋な“三名句”が散見できる。

縁切りの 灰文字かきて 日の永き

白上布(しろじょうふ) つっころばしに 痴話多し

逃げ水に 女騙せし 彼奴(きやつ)憎し

「滋賀県のことなら何でも分かる」としていた宇野は、田中角栄が幹事長時、参院選の地元候補の票を読み間違って“大目玉”をくらったことがあった。才におぼれ「水漏れ」のあった人物であった。

 加えるなら、惜しむらく、トップリーダーとしてはいささか「器用貧乏」過ぎたと言えたのだった。

■宇野宗佑の略歴

大正11(1922)年8月27日、滋賀県生まれ。学徒出陣、神戸商大を中退。昭和35(1960)年11月、衆議院議員初当選。平成元(1989)年6月、竹下退陣を受けて自民党総裁、内閣組織。総理就任時66歳。平成10(1998)年5月19日、75歳で死去。

総理大臣歴:第75代 1989年6月3日~1989年8月10日

小林吉弥(こばやし・きちや)政治評論家。昭和16年(1941)8月26日、東京都生まれ。永田町取材歴50年を通じて抜群の確度を誇る政局分析や選挙分析には定評がある。田中角栄人物研究の第一人者で、著書多数。

全文を読む
カテゴリー:
タグ:
関連記事
SPECIAL
  • アサ芸チョイス

  • アサ芸チョイス
    芸能
    2013年11月26日 10:00

    11月8日、歌手・島倉千代子(享年75)が肝臓ガンで死去した。島倉といえば、演歌の王道を歩むように、その生き様は苦労の連続だった。中でも、莫大な借金返済で味わった地獄は理不尽極まりなかったようで──。島倉は、男を信じて手形の保証人となったせ...

    記事全文を読む→
    芸能
    2026年04月28日 16:30

    バナナマンの日村勇紀が当面の間休養に専念すると、所属事務所ホリプロコムの公式サイトで発表した。今年に入ってから体調を崩すことが多く、医療機関を受診した結果、休養が必要との判断に至ったのだという。「心身の回復を第一に、コンディションを整えなが...

    記事全文を読む→
    カテゴリー:
    スポーツ
    2026年05月07日 06:30

    ゴールデンウィークが明けても再起の見通しが立たず、長すぎる空白期間を過ごしているのは、左内腹斜筋肉離れでリハビリ中のヤクルト・山田哲人内野手である。沖縄・浦添キャンプのシートノック中に脇腹の張りを訴え、戦線離脱。5月になっても打撃のひねり動...

    記事全文を読む→
    カテゴリー:
    注目キーワード
    最新号 / アサヒ芸能関連リンク
    アサヒ芸能カバー画像
    週刊アサヒ芸能
    2026/5/12発売
    ■650円(税込)
    アーカイブ
    アサ芸プラス twitterへリンク