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我が青春の週刊少年ジャンプ(11)宮下の“生き返り演出”は1度で2度おいしい

「魁!!男塾」のもう一つの“名物”は、何度も死んではよみがえるキャラクターたち。バトル展開になって以降、「男塾」では多くのキャラクターが戦いの中で命を落としていくが、感動的な死のあと、しばらくすると多くのキャラクターがあっさり「実は生きていた」と帰ってくるのも定番の流れだったのだ。

 この手の展開は、ジャンプでは珍しくはないものの、とりわけ「男塾」ではその回数が突出して多く、何十回も死んだキャラクターが生き返っている。そのよみがえりぶりは現在でもネット上のマニアックなサイトでは語りぐさになっているほど。

 宮下はこの「生き返り演出」をこう振り返る。

「キャラクターが生き返るのは、自分でも前もって想定はしていたんじゃないかな。あんまり人が死ぬのもイヤじゃない? でも、反響は大きくてね。人気キャラクターが死ぬと(読者投票の)アンケートの人気が上がる。で、生き返ったらまた上がる。『1度で2度おいしい』みたいな感じだよね(笑)」

 破天荒すぎるアバウトさだが、誤解を恐れずに言えば、ある意味そんな「いいかげんさ」こそが「男塾」の最大の魅力だったと言っていい。

 物語としては、バンカラ男たちの熱い戦いが中心とはなっているが、「男塾」には「民明書房」や「生き返り」のように、どこか笑ってしまういいかげんな要素がちりばめられており、それが今も読者の心に鮮明に残っているのだ。

 宮下は自身の作品について笑って、こう分析する。

「俺、あんまりシリアスなものとか無理なんだよ(笑)。『民明書房』も一種の笑いの要素だよね。先のことも全然考えてなかったしね。毎週行き当たりばったり。とりあえずピンチや山場を描いて、翌週に引っ張っても、その時点では、次の週のことなんて考えてなかったよ」

 一方で、そういう当時のことを振り返ると感慨深そうな表情も見せる。

「本当に勢いとアドリブ、思いつきで描いてたけど、それで人気になってたんだから、勢いがあったんだよね。何を描いても編集部に止められることはなかったしね。ジャンプは本当に自由にやらせてくれたよ。あんな漫画の時代は、もう来ないんじゃないかな」

 思いつき、行き当たりばったりと言うとマイナス評価のようにも聞こえるがそうではない。それが当時の少年ジャンプに勢いを与えていたのだ。本連載第1回に登場した漫画家・田中久志(ひすゎし)は、自身の連載中、編集者にこんなことを言われたという。

「ある時、自分の連載で主人公が足をコンクリートで固められ海に沈められるシーンを描いたんです。その原稿が掲載されたあと、別の編集さんから『あれじゃダメ。どうせなら全身コンクリートで固めないと!』と言われたんです」

「そんなことしたら脱出できないじゃないですか」と言った田中に、編集者は当然のようにこう答えた。

「脱出のしかたが予測できるようなピンチはピンチじゃない!」

 後先を考えない「いいかげんさ」がかいま見えるやり取りだが、見方を変えれば毎回漫画家が全力を尽くしストーリーを展開させる原動力が、この会話に凝縮されているようでもある。

「勢いのあるいいかげんさ」──。「魁!!男塾」をはじめ、当時のジャンプ作品が、今も多くの読者の心に残っている秘密はこのあたりにあったのかもしれない。

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