社会
Posted on 2020年11月24日 05:55

医者のはなしがよくわかる“診察室のツボ”<変形性膝関節症>「太腿上げ運動で衝撃を和らげよ」

2020年11月24日 05:55

 加齢とともに悩まされる中高年の膝痛原因の大半は「変形性膝関節症」だと言われている。

 治療法には、消炎鎮痛剤の使用や、肥満の改善、温熱療法、ヒアルロン酸の関節内注射などが用いられるが、これらはあくまで対症療法、根本的な解決策にはなりにくい。

「変形性膝関節症」で肝心なのは脚の筋肉強化。脚の筋肉が発達していれば、歩行時にかかとが地面に着く瞬間、太腿の筋肉が収縮して膝を持ち上げることで、衝撃を和らげてくれるからだ。しかし、脚の筋肉が少ないと、着地する瞬間の衝撃が、そのまま膝に響いてしまう。そのためには、脚の筋肉を鍛えることが重要となる。

 膝を鍛えるには、ウォーキングやゴルフを運動習慣とするのがいいと言われるが、脚の筋肉は、ゆっくりした動きの運動だけでは強化されない。米国タフツ大学のマリア・フィアタロン博士の1990年の報告によると、96歳以上の在宅療養を必要とするお年寄りでも、筋肉を動かす速い運動によって筋力、筋肉の大きさ、筋肉機能が顕著に改善することがわかっている。

 お勧めしたいのが、太腿を素早く上げる「太腿上げ運動」だ。腕の両肘を曲げて、骨盤前に手を出す。その手に当たるよう、太腿をできるかぎり早く上げる。これを毎日空いた時間に繰り返すことで、脚の筋肉が鍛えられる。

 他にも、今は再生医療「PRP」(多血小板血漿)が、膝治療にも取り入れられてきている。これは、血液から血小板の中の傷を治す成長因子を取り出し、数を増やして体内に戻すことで、痛みや膝の機能が改善される治療法だ。運動している人により高い効果がみられるという報告もある。

 膝痛に悩む人は、痛み止めや消炎治療などを利用しながら、できる範囲で運動を心がけたいものだ。

田幸和歌子(たこう・わかこ):医療ライター、1973年、長野県生まれ。出版社、広告制作会社を経てフリーに。夕刊フジなどで健康・医療関係の取材・執筆を行うほか、エンタメ系記事の執筆も多数。主な著書に「大切なことはみんな朝ドラが教えてくれた」(太田出版)など。

全文を読む
カテゴリー:
タグ:
関連記事
SPECIAL
  • アサ芸チョイス

  • アサ芸チョイス
    社会
    2025年03月23日 05:55

    胃の調子が悪い─。食べすぎや飲みすぎ、ストレス、ウイルス感染など様々な原因が考えられるが、季節も大きく関係している。春は、朝から昼、昼から夜と1日の中の寒暖差が大きく変動するため胃腸の働きをコントロールしている自律神経のバランスが乱れやすく...

    記事全文を読む→
    社会
    2025年05月18日 05:55

    気候の変化が激しいこの時期は、「めまい」を発症しやすくなる。寒暖差だけでなく新年度で環境が変わったことにより、ストレスが増して、自律神経のバランスが乱れ、血管が収縮し、脳の血流が悪くなり、めまいを生じてしまうのだ。めまいは「目の前の景色がぐ...

    記事全文を読む→
    社会
    2025年05月25日 05:55

    急激な気温上昇で体がだるい、何となく気持ちが落ち込む─。もしかしたら「夏ウツ」かもしれない。ウツは季節を問わず1年を通して発症する。冬や春に発症する場合、過眠や過食を伴うことが多いが、夏ウツは不眠や食欲減退が現れることが特徴だ。加えて、不安...

    記事全文を読む→
    注目キーワード
    最新号 / アサヒ芸能関連リンク
    アサヒ芸能カバー画像
    週刊アサヒ芸能
    2025/7/22発売
    ■620円(税込)
    アーカイブ
    アサ芸プラス twitterへリンク