社会

福島原発被災児童の作文でわかった“1000日の慟哭”(1)「震災が頑張る子供たちの気持ちを奪い続けている」

 津波被害とは明らかに性質の違う、福島原発による放射能被害。被災した子供たちの作文からは、一つも進まない復興の現実が読み取れるのだ。

 4月1日に、福島第一原発事故後、初めて避難指示区域が解除されることが決定した。岩手、宮城、福島の115人の子供たちの作文集「つなみ」(文藝春秋)の著者で、みずから作文を集めたジャーナリストの森建氏は、福島の被害の特異性をこう語った。

「津波で被災した子供たちは、波を見ていますから、被害がわかります。しかし、福島の子供たちは、放射能という見えないものから避難しているので、逃げている理由を理解できているのか、というのが疑問でした。まず大人に聞いたのですが、低学年の子供は避難の理由がわからなかったそうです。体に悪いのはわかるようなのですが、それ以上のことはわからないのです。だからこそ、子供たちにはストレスがたまったのだと思いました」

 森氏は、事故の翌年1月から福島で作文を集め始めた。会津に避難した楢葉町の小学校1年生(学年は全て当時)の男児は、「かぞくのだいじなおもいでだから」という題で、400字詰め原稿用紙1枚半にわたって、こんな心情をつづっていた。

〈じしんとつなみとげんぱつじこで ならはは、きけんなので、ひなんすることになりました〉

 書かれた楢葉町での家族との思い出は、どこにでもある小学生の姿だ。

〈しゃしんは、なくなったけど、ぼくは、ちゃんとおぼえています(略)ぼくは、じしんとつなみで、たすかった一つのいのちをだいじにしたいです〉

 原発事故は、わずか6歳の子供から故郷を奪う形で「家族」と「命」の大切さを実感させているのだ。

 家族が酪農業を営んでいた楢葉町の小学校4年生の男児は「今、思うこと」という題でこんなことを書いている。

〈ぼくもおじいちゃんも牛が大好きでした。だからこれからも牛とずっといっしょにくらしていけるんだなぁと思っていました。〉

 児童には一時帰宅許可が下りず、家がどうなっているのかもわからない。そして作文はこう閉じられていくのだった。

〈ぼくの家族だった大好きな牛はいなくなってしまったけれどぼくは元気に会津で生活しています。流された牛の分も、ぼくはがんばっていきたいです〉

 しかし、震災は子供たちから「頑張る」気持ちを奪い続けている。前出・森氏が語る。

「努力や頑張りは、今やれば明日は必ず開けるという気持ちが支えます。ところが一瞬にして破壊をもたらす震災は『頑張っても帳消しですよ』という現実を突きつけました。子供たちに、『やったところでどうにもならない』という決定的な絶望を植え付けた可能性があります」

カテゴリー: 社会   タグ: , , , , , , , ,   この投稿のパーマリンク

SPECIAL

アサ芸チョイス:

    「男の人からこの匂いがしたら、私、惚れちゃいます!」 弥生みづきが絶賛!ひと塗りで女性を翻弄させる魅惑の香水がヤバイ…!

    Sponsored

    4月からの新生活もスタートし、若い社員たちも入社する季節だが、「いい歳なのに長年彼女がいない」「人生で一回くらいはセカンドパートナーが欲しい」「妻に魅力を感じなくなり、娘からはそっぽを向かれている」といった事情から、キャバクラ通いやマッチン…

    カテゴリー: 特集|タグ: , , |

    塩試合を打ち砕いた!大谷の〝打った瞬間〟スーパー3ランにMLBオールスターが感謝

    日本時間の7月17日、MLBオールスター「ア・リーグ×ナ・リーグ」(グローブライフフィールド)は淡々と試合が進んでいた。NHK総合での生中継、その解説者で元MLBプレーヤーの長谷川滋利氏が「みんな早打ちですね」と、少しガッカリしているかのよ…

    カテゴリー: スポーツ|タグ: , , , |

    新井貴浩監督が絶賛!劇画のような広島カープ野球の応援歌は「走れリュウタロー」

    プロ野球12球団にはそれぞれ、ファンに親しまれるチームカラーがある。今季の広島カープのチームカラーを象徴するシーンが7月初旬、立て続けに2つあった。まずは7月4日の阪神戦だ。3-3で迎えた8回裏、カープの攻撃。この試合前までカープは3連敗で…

    カテゴリー: スポーツ|タグ: , , , |

注目キーワード

人気記事

1
岡田監督よく言った!合計43得点のオールスター戦が「史上最もつまらなかった」とファンが怒った当然の理由
2
巨人・阿部慎之助監督のエンドラン外し「捕手の勘だった」発言に江川卓が「それはない」異論のワケ
3
認知症の蛭子能収「太川陽介とバス旅」は忘れてもボートレース場で「選手解説」ギャンブラー魂
4
レジェンドOBなのになぜ!ド低迷の川崎フロンターレ「中村憲剛」新監督案をサポーターが拒絶
5
【衝撃事実】見たのは誰だ!トランプ銃撃犯は「11分間ドローンでライブ配信」していた