芸能
Posted on 2022年09月06日 05:59

竹内涼真&横浜流星「アキラとあきら」の重要なセリフに「おやっ」と…/大高宏雄の「映画一直線」

2022年09月06日 05:59

 若手実力派俳優の「競演」と言うべきだろう。なかなか、あることではない。竹内涼真と横浜流星が主演した「アキラとあきら」だ。

 池井戸潤の同名小説を、「今夜、世界からこの恋が消えても」と「TANG タング」が公開中の三木孝浩監督が手掛けた。監督は2人の個性をうまく引き出しており、面白かった。心地よい作品と言ってもいい。

 育った環境が全く異なった2人が、同じ銀行に入る。竹内演じる瑛は、倒産した町工場経営者の息子で、数々の辛酸を舐める。横浜演じる彬は、海運業などの事業を多角的に展開する大企業の御曹司だ。

 だが、親族間でいさかいが絶えない。2人は入社時から群を抜く資質を見せる。

 瑛は一本気で、理想主義者だ。資金繰りに悪戦苦闘する中小企業に肩入れする。竹内は真正面から役を演じた。いわゆる、直球型だ。

 結構多い彼のアップのショットからはその都度、屈託のない爽やかさが匂い立つ。爽やかさと言ってしまうと、表面的で浅い意味に捉えられかねないこともあるが、そうはならない。うちひしがれる時もあるが、理想に向かう姿に妙な混濁感がないからだ。表情から内面を通底している心根の透明感が、一貫しているように感じる。彼の得難い個性の一端が垣間見られた。

 一方の彬は、瑛とは対象的な信念を持つ。銀行マンとしての理想的な思い入れは、逆に足をすくわれかねないという姿勢だ。横浜は、いささか暗い表情の中に、その思いの強さをにじませる。強さの中には、内面的な優しさも透けて見える。両者は屈折した表情の中で、二重写しになると言えようか。

 瑛のようには、理想の所在を明らかにしているわけではない。だが、彬の理想像は硬い甲羅を破るがごとく、表に出ようともがいている感じだ。その苦渋の様が、横浜の演技からひしひしと伝わってくる。

 本作の重要なセリフを挙げたい。これは作品のテーマともかかわる。彬が瑛に言う「育ちがいいな」だ。

 お金に不自由のない彬が、貧困の逆境をかいくぐった瑛に言ったから「おやっ」と思った。普通なら逆だが、「育ちがいい」が、ここでは家庭環境とは全く違った意味で使われている。いかなる環境下であろうと、理想をもって真っすぐに生きることの大切さだ。これが気恥ずかしく見えない。

 加えて、さらに重要な言葉がある。理想に向かうための「確実性」だ。

 この言葉は瑛の上司(江口洋介)の口から出るが、実のところ、理想を掲げるだけではどうしようもない。過程の実体が伴わなければ、周囲も納得しない。

 そのためには、何をするか。本作はそこを堂々と、真正面から描こうとしている。そこがいいのだ。竹内涼真、横浜流星は、その狙いに存分に応えたと思う。

(大高宏雄)

映画ジャーナリスト。キネマ旬報「大高宏雄のファイト・シネクラブ」、毎日新聞「チャートの裏側」などを連載。「昭和の女優 官能・エロ映画の時代」(鹿砦社)など著書多数。1992年から毎年、独立系作品を中心とした映画賞「日本映画プロフェッショナル大賞(略称=日プロ大賞)」を主宰。2022年で31回目を迎えた。

全文を読む
カテゴリー:
タグ:
関連記事
SPECIAL
  • アサ芸チョイス

  • アサ芸チョイス
    芸能
    2022年07月05日 17:58

    可愛さ余って憎さ百倍。いやはや、この2人のバトルは本当にすさまじかった。沢口靖子が主演したNHK連続テレビ小説「澪つくし」や、渡辺謙主演の大河ドラマ「独眼竜正宗」の脚本を手掛け、飛ぶ鳥を落とす勢いだった脚本家のジェームス三木氏。ところが19...

    記事全文を読む→
    芸能
    2026年07月31日 06:45

    堺雅人主演ドラマ「VIVANT」(TBS系)が3年ぶりの続編でも、圧倒的な存在感を放っている。第2シーズンの初回放送は、平均世帯視聴率18.8%(ビデオリサーチ調べ・関東地区)を記録。放送中にはXで世界トレンド1位になった。前作は2023年...

    記事全文を読む→
    カテゴリー:
    タグ:
    芸能
    2026年08月06日 17:00

    2024年7月に停車中のロケバス内で共演者の女性に性的暴行をしたとして、不同意性交と不同意わいせつの罪に問われたのは、元お笑いトリオ「ジャングルポケット」の斉藤慎二被告だ。その第6回公判が8月5日に東京地裁で開かれ、検察側は懲役7年を求刑。...

    記事全文を読む→
    注目キーワード
    最新号 / アサヒ芸能関連リンク
    アサヒ芸能カバー画像
    週刊アサヒ芸能
    2026/8/4発売
    ■690円(税込)
    アーカイブ
    アサ芸プラス twitterへリンク