社会

野良猫のたまり場を発見!ライトで照らすとサッと動いたのは…/二度連れ戻された「脱走ねこ」の物語(10)

 クールボーイが再び脱走したことを、保護猫としてお世話してくれたMさんには電話で伝えた。

「クーちゃん、また、いなくなったの!?」

 半ば、怒っている。

「探してもいない?どこに行ったかわからない?」

「見つかるか出てくるか、待ってたから、探すのはこれから」

「戸締りとか、してなかったの?」

「それが…」とクールの脱走経路を説明した。ベランダの植木鉢のホルダーに乗って、そこから隣家の庇に飛び乗った、その可能性が高い、と。

「ベランダに取り付ける柵のようなものと、それに垂らすネットがあるけど、それはやってなかった?」

「まさかホルダーに飛び乗って、とは考えてもいなかったから。そこまでは…。ネットは初耳」

「私のところにネットがあるから、それをすぐに送るね」

 とはいっても、あとの祭りなわけだが。

「とにかくクーちゃんを探してみて。この前、隠れた空き家とかも。まだそんなに遠くには行っていないはずだから」

 懐中電灯片手に、また猫探しが始まった。前回の捜索で近所のどこを見て回ればいいのかはわかっているので、まずはひと通りチェックだ。

 前回、隠れた4軒隣りの空き家周辺を、何度も確認した。空き家と学習塾の裏階段、その間の塀や隙間も。だが、見つからない。

 いったん家に帰って、連れ合いのゆっちゃんと作戦会議。

「前回、空き家で見つけた時に一緒にいた茶トラの猫ちゃん。あの猫がうちの周りをウロウロしていることもあるのよ」

「トラちゃんか」

「クーはトラちゃんがウチの周りいることに気が付くと、窓際へ急に駆け出したり。トラちゃんが来ないか、ジッと窓際で待っていることもあるわ」

「ジュテやガトーよりも野良、野生の猫の方が、クールとは相性がいいのかもしれないな」

「でも、大きな道路が近くにあるわけだし、外には出せない。田舎の家や大きな庭がある家なら、クーは放し飼いしてあげたいくらい」

「で、トラちゃんはどうしているのかな」

「最近も買い物の帰りに見かけたよ」

「トラちゃんを探すのもいいかもね。クーがついて歩いているかも」

「とにかく、早いとこ見つけ出して、また捕獲器におびき出す作戦しかないね」

 夜中、再び外に探しに出た。トラちゃんがもし、まだ空き家を根城にしているようなら、クールも一緒にいるかもしれない。ひと通り見回ってから、空き家周辺にしばらく立ち続けた。

 空き家は通りに面して玄関があり、その塀に沿ってすぐ横に、庭へと入る木製の扉があった。無断だけど、入ってみようか。扉が開くかどうかわからないままノブをひねると、動いて、簡単に扉が開いた。そっと中に入ってみる。前回、ガトーがトラちゃんとルンルンしていた庭の縁台やその下も確認し、ライトで照らしてみる。クールがいそうな気がする。

 ン…?何かが動いた。猫だ。だがクールではないし、トラちゃんでもない。ガトーのようなサバトラっぽい猫が警戒して、素早く逃げていってしまった。やはりここは野良猫たちのたまり場ではないか。トラちゃんもいる、それならクールも…。

 いったん不法侵入をやめ、扉を閉めたらギ~と音がして、体がビクッとなる。ヤバイ、ヤバイ。それでもクールを見つけるためには、やるしかない。

(峯田淳/コラムニスト)

カテゴリー: 社会   タグ:   この投稿のパーマリンク

SPECIAL

アサ芸チョイス:

    医者のはなしがよくわかる“診察室のツボ”<マイクロスリ―プ>意識はあっても脳は強制終了の状態!?

    338173

    昼間に居眠りをしてしまう─。もしかしたら「マイクロスリープ」かもしれない。これは日中、覚醒している時に数秒間眠ってしまう現象だ。瞬間的な睡眠のため、自身に眠ったという感覚はないが、その瞬間の脳波は覚醒時とは異なり、睡眠に入っている状態である…

    カテゴリー: 社会|タグ: , , , , |

    医者のはなしがよくわかる“診察室のツボ”<紫外線対策>目の角膜にダメージ 白内障の危険も!?

    337752

    日差しにも初夏の気配を感じるこれからの季節は「紫外線」に注意が必要だ。紫外線は4月から強まり、7月にピークを迎える。野外イベントなど外出する機会も増える時期でもあるので、万全の対策を心がけたい。中年以上の男性は「日焼けした肌こそ男らしさの象…

    カテゴリー: 社会|タグ: , , , , , |

    医者のはなしがよくわかる“診察室のツボ”<四十肩・五十肩>吊り革をつかむ時に肩が上がらない‥‥

    337241

    最近、肩が上がらない─。もしかしたら「四十肩・五十肩」かもしれない。これは肩の関節痛である肩関節周囲炎で、肩を高く上げたり水平に保つことが困難になる。40代で発症すれば「四十肩」、50代で発症すれば「五十肩」と年齢によって呼び名が変わるだけ…

    カテゴリー: 社会|タグ: , , |

注目キーワード

人気記事

1
永野芽郁の二股不倫スキャンダルが「キャスター」に及ぼす「大幅書き換え」の緊急対策
2
神宮球場「価格変動制チケット」が試合中に500円で叩き売り!1万2000円で事前購入した人の心中は…
3
「これは…何をやってるんですかね」解説者がア然となった「9回二死満塁で投手前バント」中日選手の「超奇策」
4
もうやめろ!大谷翔平「パパ初ハラスメント」にうんざりする「過熱報道への反発」
5
巨人で埋もれる「3軍落ち」浅野翔吾と阿部監督と合わない秋広優人の先行き