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撮影当日、“一度のリハを経ていきなり本番”といった、噂どおりの北野映画のスピーディぶりに、恐ろしく緊張しながらも、なんとかNGを連発するといった最悪の事態を免れ、カメラ前での初めてのお芝居をやり終えたわたくしが、足早に監督のもとへ行き、「ありがとうございました」と、お礼を述べると、
「どうだ、少しは緊張したか?」
と、監督から声をかけられ、なんとか無事、“映画スターへの第一歩”を歩みだしました。
そして、撮影が終わり、帰りの車中にて、運転しているわたくしに後部座席の監督から、
「お前、あのタクシー泥棒役が評判になってよ、意外に映画の仕事が来ちゃうかもしれねーぞ」
と、なんともうれしい未来予想図を放り込まれたのです。この時、いつだって自分に都合のいい解釈しかしないわたくしは、3年後あたりには、日本映画を背負って立つ、“どこへ出しても恥ずかしくない、タクシー泥棒専門役者”として、華々しく活躍している姿を妄想して、1人ニヤニヤしながら運転をしていると、
「お前、今、本気で役者で売れるって想像してなかったか? なかなかずうずうしい奴だな」
と、あっさり“何をその気になってんだ”といった、心中を見透かされたツッコミを殿から頂戴したのでした。
その後、わたくしは運転手を卒業すると、「菊次郎の夏」「BROTHER」「Dolls」「座頭市」といった、4本の北野映画を、今度は殿の付き人として体験していくことになりました。
その中で、一番思い出深いのは、主演の深田恭子さんが演じるアイドルの「熱狂的な追っかけ」といった、はっきりと“いい役”を頂いた、「Dolls」なのですが、この時、わたくしの後輩で、当時のたけし軍団の最若手であった「サミーモアモアJr」という、いつも口が開いていた後輩芸人が、やはり突然に映画出演のビッグサプライズを受け、初映画出演を果たすことになったのです。が、彼が頂いた役が「町のバカ」といったものだったため、撮影時、現場ではこんな会話が飛び交っていました。
助監督「えー町のバカ役、サミーモアモアJrさん入ります。では、ご紹介します。本日、町のバカをやります。サミーモアモアJrさんです」
モアモア「どうも、町のバカのサミーモアモアJrです。よろしくお願いします」
このやりとりを聞いていた殿は、
「何だ! さっきからバカバカって、あいつはどんだけバカなんだ!!」
と、自身で付けた役名にツッコミを入れていました。
そして、この「Dolls」出演時にわたくしは、当時、北野映画の恒例行事となっていた“どっきり”を殿から仕掛けられ、みごとにあたふたすることになるのです。続く──。
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