社会

福島第一原発「12年間の不都合な真実」前編(1)大幅にずれ込む困難な廃炉計画

 東日本大震災から、間もなく12年が経とうとしている。各地で様々な被害が発生した中で、今も残る最大の課題の1つが国際原子力機関(IAEA)がチョルノービリ(チェルノブイリ)原発と並ぶ深刻事故と評価した、東電・福島第一原発事故の廃炉作業だ。絵空事に過ぎない不都合な現実を徹底取材する!

 福島第一原発での作業は2011年12月、東電、資源エネルギー庁、原子力安全・保安院(当時)が初版を公表したロードマップ(工程表)に沿って行われている。同ロードマップはその後、幾度か改定されているものの、同年12月から最長40年(2051年)とした廃炉完了までの期間に変更はない。しかし現状を見れば、もはやその廃炉計画は絵空事に過ぎない。

 そのことを解説する前に改めて簡単に事故について振り返っておく。

 3月11日に発生した東日本大震災により、福島第一原発では構内の鉄塔倒壊などで各原子炉への外部電源を喪失。非常用発電機を作動させたが、地震後に押し寄せた津波で1~4号機の原子炉建屋周辺が水没して、非常用電源も停止した結果、全ての電源を喪失した。そのため原子炉圧力容器内の核燃料を継続的に冷却することが不能になり、1~3号機で炉心溶融(メルトダウン)が発生。溶けだした核燃料が圧力容器の底部を突き破り、原子炉格納容器内に溶け落ちた。

 この過程で大量発生した水素が原子炉建屋内に充満した結果、3月12日には1号機、14日には3号機、15日には4号機で、それぞれ水素爆発が発生して建屋上部が吹き飛んだ。当時、定期点検中で原子炉内に核燃料がなかった4号機の爆発は、排気塔を共有していた3号機から流れ込んだ水素が原因で爆発が発生したと推定されている。

 また、事故により1~3号機では格納容器が損傷。これにより溶け落ちた燃料を冷却するために常時炉内に注入している水が漏れ出し、原子炉建屋に隣接する発電用タービンを格納する建屋地下に「汚染水」が滞留。現在、東電はこの汚染水を汲み上げ、多核種除去システム(ALPS)で数多くの放射性物質を取り除いた「処理水」に変え、構内に保管しているのだ。

 この廃炉作業は、1~4号機内にある核燃料を安全に取り出すことが肝中の肝だ。この核燃料とは、メルトダウンで1~3号機の圧力容器と格納容器の中に溶け落ちて残る通称「燃料デブリ」と、事故前から原子炉内の使用済み燃料プールで冷却保管が続いている使用済み核燃料の2つだ。

 このうち使用済み核燃料の取り出しは、14年12月に4号機、21年2月に3号機で完了。前述のように発災当時に炉心に核燃料がなかった4号機では、懸念材料はほぼなくなったと言ってよい。

 一見順調そうに見える廃炉作業だが、すでに現時点でもロードマップからの遅れが明らかだ。使用済み核燃料の取り出しが完了した3号機は、当初計画での使用済み燃料棒取り出しは15年度上半期に開始予定だった。だが、建屋上部に残された水素爆発によるがれきの撤去後も使用済み燃料プール・フロアの高線量に悩まされ、実際の取り出し作業開始は19年4月にまで4年もずれ込んでいる。

ジャーナリスト・村上和巳

カテゴリー: 社会   タグ: , , ,   この投稿のパーマリンク

SPECIAL

アサ芸チョイス:

    ゲームのアイテムが現実になった!? 疲労と戦うガチなビジネスマンの救世主「バイオエリクサーV3」とは?

    Sponsored

    「働き方改革」という言葉もだいぶ浸透してきた昨今だが、人手不足は一向に解消されないのが現状だ。若手をはじめ現役世代のビジネスパーソンの疲労は溜まる一方。事実、「日本の疲労状況」に関する全国10万人規模の調査では、2017年に37.4%だった…

    カテゴリー: 特集|タグ: , , , |

    藤井聡太の年間獲得賞金「1憶8000万円」は安すぎる?チェス世界チャンピオンと比べると…

    日本将棋連盟が2月5日、2023年の年間獲得賞金・対局料上位10棋士を発表。藤井聡太八冠が1億8634万円を獲得し、2年連続で1位となった。2位は渡辺明九段の4562万円、3位は永瀬拓矢九段の3509万円だった。史上最年少で前人未到の八大タ…

    カテゴリー: エンタメ|タグ: , , , |

    因縁の「王将戦」でひふみんと羽生善治の仇を取った藤井聡太の清々しい偉業

    藤井聡太八冠が東京都立川市で行われた「第73期ALSOK杯王将戦七番勝負」第4局を制し、4連勝で王将戦3連覇を果たした。これで藤井王将はプロ棋士になってから出場したタイトル戦の無敗神話を更新。大山康晴十五世名人が1963年から1966年に残…

    カテゴリー: エンタメ|タグ: , , , , , |

注目キーワード

人気記事

1
JR東日本に続いて西と四国も!「列車内映像」使用NG拡大で「バスVS鉄道旅」番組はもう作れなくなる
2
【ボクシング】井上尚弥「3階級4団体統一は可能なのか」に畑山隆則の見解は「ヤバイんじゃないか」
3
これはアキレ返る!「水ダウ」手抜き企画は放送事故級の目に余るヒドさだった
4
舟木一夫「2年待ってくれと息子と約束した」/テリー伊藤対談(3)
5
リストラされる過去の遺物「芸能レポーター」井上公造が「じゅん散歩」に映り込んだのは本当に偶然なのか