落合監督の逆襲は金銭面だけにとどまらない。監督解任発表からチームは一変。10月18日の優勝まで18勝6敗と快進撃を続け、逆転優勝を成し遂げたのだ。
まさに「勝利至上主義」の落合監督が、球団を見返した瞬間であった。
だが、その裏には、落合監督の「電撃解任」に奮起した選手たちの思いもあったという。
「あまりにも非人道的なやり方で義憤を感じた。ロッカーでも冗談じゃない。監督がかわいそうとなった」(中日ベテラン選手)
日本シリーズ進出を決めたCS第5戦、中3日で吉見一起を先発で起用した。
「最多勝のお前に託した」
という無言の後押しに支えられ、みごと勝利した。落合監督は、
「今まで見た中で最高にいいピッチングをしてくれた」
と、にこやかにほめていた。
「落合監督の選手起用の根本には、選手をプロとして認めている信頼感が大きい。キャンプでは『自分(落合)以上の選手はいないのだから練習しかない』と言って、猛練習を課している。しかも、中日だけキャンプでの予定表に何も書いておらず、全てコーチに従ってという方針がある。そこには『軽い練習』は存在しない。選手が練習を休みそうになると、落合監督はコーチをさりげなく、その選手のそばに立たせたりして鍛えていた。それが、『最後の体力勝負の差になって出てくる』と自負しています」(中日OB)
さらに、今シーズンになって大きく変わったのが、選手に対する接し方である。それは選手起用にも如実に現れた。
象徴的だったのは、リーグ優勝の場に立てなかった岩瀬仁紀を起用した場面だ。CS第5戦の日本シリーズ進出を果たす直前の最終回、2点リードの局面であえて投入。青木宣親にタイムリーヒットを打たれ1点を失うと、即座に浅尾に交代した。「温情と冷酷」の表裏一体の采配で、勝ち抜いてきた今シーズン。「何をバタバタしているのか」と泰然自若を決めているようにも見える。
その真骨頂が遺憾なく発揮されたのが、CS第2戦でのこと。1点リードされての9回に河原純一を送り込んだのだ。
河原といえば、佐伯貴弘と一緒に今季限りで、中日から戦力外通告を受けた選手。負けている試合とはいえ、まだ1点差で逆転の可能性も捨てきれない。そのタイミングでの起用は落合監督からすれば「まだまだやれる」という球団に対してのアピールであり、 「ああいうのを見ると選手は燃えます」(中日中堅選手)
結果こそ出なかったものの、中日といえば12球団随一の投手王国である。他に投手がいないわけではないのに、あえて河原というところに、落合監督の意地を見せたのだ。
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