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掛布雅之 上位3球団が抜け出せない理由は勝てないエースの「悶々」と「孤立」(1)

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 お盆を過ぎてもセ・リーグの優勝争いは混沌としたままです。巨人、阪神、広島の上位3チームが、波に乗れないまま、ひしめき合っています。その理由の一つは、各チームのエースが自軍を引っ張りきれていないからです。

 中でもいちばん苦しんでいるのが阪神の能見です。7月31日のヤクルト戦(甲子園)では自身6連敗、12球団最速での10敗目を喫しました。「チェンジアップが消える」とまで相手バッターに言わしめた虎のエースが、ここまでは屈辱のシーズンを過ごしています。巨人との開幕戦で10失点KOされ、何かリズムをつかめないまま、自信を取り戻せずに、ここまで来てしまった感じです。

 今年の能見は変化球が高めに浮く傾向があります。バッターからすると、高めに浮いた変化球は最も遠くへ飛ばせる球となりますから、致命的な一打を食らうケースが増えてしまうのです。球離れが早いのか、下半身の粘りがないのか、投球メカニズムに関してはわかりませんが、精神的なものも大きく左右しているのは間違いないでしょう。

 投手というのは野手からすると、非常に繊細に見えます。能見ほどの投手でも少し歯車がズレると、修正が利かなくなってしまいます。自分の投球をしようとすればするほど、簡単に失点を繰り返す悪循環にハマるのです。同じ「チームの柱」でも4番打者だと、調子を取り戻すために試合状況を見ながら1、2打席は捨てることが可能です。ですが、投手は不用意な1球が命取りになります。特にエースと言われる投手は自分の調子を取り戻すために、試合を壊すような投球は許されないのです。ここが野手と違って、投手の難しいところです。

 投手がスランプに陥った時の特効薬は、やはり勝ち星が付くこと。内容も大事ですが、とにかく一つ勝てば精神的にはまったく違うはずです。野手は次の試合でミスを取り返すチャンスがありますが、先発投手は中5日も6日も待たなくてはいけません。そこでリベンジに失敗すると、またしばらく悶々と過ごす日々が続きます。能見の場合は5月24日のソフトバンク戦(ヤフオクD)で5勝目をあげてから、6勝目は8月9日の広島戦(京セラD)までかかりました。精神的なストレスは相当だったはずです。

 その6勝目で気分が晴れ、次戦から白星街道かと思われたのですが、8月15日のDeNA戦(横浜)でも今季を象徴するような投球を見せてしまいました。4-0で迎えた6回に突如リズムを崩して3失点。その回かぎりで降板し、リリーフが打たれて自身の白星が消えました。あの早い交代が今の能見への信頼度を表しています。

 その時の球数はまだ97球でした。エースなら最低でも8回までは投げなくてはいけない試合です。マウンドを降りた表情を見ても、特別に悔しさを表すこともなく淡々としていました。ポーカーフェイスは能見の長所でもありますが、もう少し喜怒哀楽を出して野手陣にメッセージを送ってもらいたい。昨季終盤の巨人戦で打たれたあとベンチでグラブを投げつけたように元来、熱いものを持っている男です。もっと自己表現をするべきだと思います。

阪神Vのための「後継者」育成哲学を書いた掛布DCの著書「『新・ミスタータイガース』の作り方」(徳間書店・1300円+税)が絶賛発売中。

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