発端は広島のルーキー・岡本駿(22)が投じた一球だった。阪神・坂本誠志郎(31)の頭部を直撃して危険球退場となった。岡本は謝罪し、坂本も大事には至っていないことをアピールしたが、阪神・藤川球児監督(44)が激高。敵将・新井貴浩監督(48)を挑発してみせたのだった。一見、選手を守るための責任感ある行動ともとれる。だが、あれから藤川監督はほかならぬチーム内でも浮き始めているというのだ。
1カ月ぶりの因縁試合が、5月16日からの甲子園3連戦で行われた。
「同カード初戦から両監督は、試合前のメンバー表交換で握手こそ交わしましたが、2戦目までは目を合わせなかったんです」(スポーツ紙デスク)
近年まれに見るイザコザに注目が集まるのを嫌がったのか、18日の3戦目は目を合わせて握手。試合後には、両監督に騒動の見解が求められ、新井監督はこう説明した。
「こちらとしては謝罪をしてたんだけどね。自分もチームを預かる年長者として、腹に据えかねるものがあった。ルーキー・岡本投手の外の変化球がすっぽ抜けてしまった。それについても謝罪したんですけど。うちから何かを言ったことは一切ない」
確かに新井監督が年長者。08〜12年までは、阪神で同じユニホームを着ていた間柄であるにもかかわらずである。一方の藤川監督は騒動について、言及を避けたが、
「会見で記者から騒動の件を聞かれると『ここでお話しすることではない。質問に上がること自体、ふさわしくない』と不機嫌に対応した。続けて『できれば試合後の会見では、その質問を控えていただけるとありがたい』とシャットアウト。ファンも気を揉むやり取りですが『あまりするべきじゃないのかなと思う』とは、因縁を煽る行為をしたのは自分なのに、これでは説明責任を果たしていません」(球団OB)
しかも、この“塩対応”、念には念を入れていた。
「試合後のネットニュースなどで速報された藤川監督のコメントは球団広報が“検閲”した上で担当メディアに『こういう形で記載せよ』と指示していたものでした。身内からも『違和感を感じる』との声が漏れてきています」(球団関係者)
藤川監督は岡田彰布前監督(67)を引き継いで、今季から指揮官に就いている。思い起こせば、昨年秋の就任会見から火種はくすぶっていたようだ。
前出・球団OBが言う。
「藤川監督は岡田政権を踏襲してチームを発展させるのではなく、あくまで“球児流”で勝てるチームを作る方針を打ち出していました。これには球団オーナー付き顧問でチームに籍を残した岡田氏も『球児はホンマ大丈夫か!? おーん』といつも以上に首をかしげていた」
そんな不安が徐々に現実のものになっているのだ。
2月の春季キャンプに入ると、さっそく4番を大山悠輔(30)から森下翔太(24)に据え変えることを宣言。実績ある大山に対し、後輩との競争を課した形となった。
「藤川監督ははっきり言って、野手のことを理解できていません。そのため、藤本敦士総合コーチ(47)に任せっきりなのです。にもかかわらず打線にメスを入れたのは、1年目から“球児チルドレン”を作りたかったからで、ミエミエの思惑に選手からも『森下はもちろん、大山もやりづらいだろう‥‥』と不協和音を気にする声が続出。キャンプ中には25歳以下の若虎に対し、事実上の“外出禁止令”をいきなり発した。管理野球をすることで球団フロントの株を上げようとする意図があり『ご自身は若手時代、遊び回っていたのに、いったいどうなってるの!?』と不満を漏らす選手もいました」(前出・球団OB)
オープン戦で思うように勝てない頃も「本番は開幕してからですよ」と、どこ吹く風だった藤川監督。そんな余裕も、開幕してから徐々に消えうせてしまう。前出・球団関係者が指摘する。
「若手選手への小言が急に増えました。経験値が浅い選手に『そりゃ無理でしょう』と同情したくなるような高度なプレーや連携を注文するようになった。チーム関係者からは、ボヤキ節が多かった前監督に引っかけて“小岡田”と揶揄されるようになりました」
勝負師として馴れ合いを避けるのは正論だが、その姿勢は報道陣に対しても先の通り。4月後半にも、こんなことがあったという。
「この日は解説者時代、懇意にしていたある民放テレビ局が試合を中継しました。試合後に同局のアナウンサーが藤川監督にマイクを向けたのですが、とにかく素っ気ない対応。特に選手起用などを聞かれると、はぐらかすことが多かった。見かねた古参スタッフから球団に水面下で『球児さん、何とかなりませんかね‥‥』と泣きを入れる事態になったのです。これを伝え聞いた藤川監督はインタビューのVTRを改めて視聴し、どこが悪くて、どこがよかったのか、すぐさま自己分析を始めた。少しは反省したのか、次の中継局のインタビューから『ちょっとは話そうか』と改めたそうですが、それがたまたま不定期で出演していた『サンデースポーツ』を放送するNHKでした。そのため『民放には厳しく、NHKには優しい』と、藤川監督の対応を訝る声が噴出したのです」(在阪テレビ局関係者)
1つのボタンの掛け違いで、たちまち混乱に陥るのは人気球団ゆえの宿命か。現役時代同様、山あり谷ありのペナントレースの中で、藤川監督には微修正しながら火の玉采配を振るってほしいものである。