社会
Posted on 2024年08月05日 05:58

25歳で早逝した伝説の吉原遊女の精霊が「年中行事」になった「人望と飲みっぷり」

2024年08月05日 05:58

 死んでもなお一大イベントとして名を残した、伝説の遊女がいる。豪快な飲みっぷりで有名だったその人物が「角町中万字屋勘兵衛」お抱の玉菊である。

 享保11年(1726年)生まれの玉菊は茶の湯、生け花、俳諧、琴曲などに精通し、河東節の三味線と拳の妙手といわれる、才色兼備の遊女だった。河東節は浄瑠璃の一種で、拳は現代のじゃんけんの元になったとされる遊びだ。その姿は歌川豊国の浮世絵にも描かれている。

 10歳前後で吉原に売られてきた玉菊は17歳の頃に遊女になったが、人柄は気さくで気前が良かった。そのため客や同僚の遊女だけでなく、妓楼で働く雇い人にも慕われた。

 パトロンは江戸の大材木商、5代目奈良屋茂左衛門だったため、玉菊はぜいたく三昧の暮らしを送った。玉菊に貢いだ奈良屋は、この5代目で家産を使い果たしたという。

 浮世絵に杯を手にした姿が描かれるほど豪快な飲みっぷりで知られたが、これが命取りになった。大の酒好きがたたって体を壊し、わずか25歳でこの世を去ったのだ。

 これを惜しみ、人々は亡くなった年の新盆、盂蘭(うら)盆では、吉原中の各見世が軒下に燈籠を掲げて玉菊の精霊を祀った。これは「玉菊燈籠」と呼ばれるようになり、翌年以降は7月いっぱい吉原で行われる年中行事になった。

 この期間は通行手形こそ必要だったが、女人禁制の吉原に女性も入ることができたため「玉菊燈籠」は「三月の仲之町桜」「八月の俄(にわか)」と並び、吉原三景容のひとつとなった。

 享保13年の三回忌には、二代目十寸見蘭洲が「水調子」という河東節をかたる追善供養が行われた。それ以降、玉菊にいた「角町中万字屋勘兵衛」でこの曲をひくと玉菊の霊が出現する、と伝えられた。

 百回忌の追善集には酒井抱一が序文を書き、1926年(大正15年)の二百回忌には、歌舞伎座で中村歌右衛門が玉菊を演じている。

 玉菊が使用したとされる三味線は受け継がれ、近代では俳人・岡野知十、河東節の山彦文子、荻江節宗家で前田青邨夫人の荻江露友の手を経て、現在に至っている。なお、玉菊の墓は東京・台東区の永見寺にある。

(道嶋慶)

全文を読む
カテゴリー:
タグ:
関連記事
SPECIAL
  • アサ芸チョイス

  • アサ芸チョイス
    スポーツ
    2026年06月24日 07:15

    ドジャース・大谷翔平の第二子誕生をめぐって、フェミニストを名乗る女性たちがSNS上で「多産DVだ」「年子出産は女性虐待だ」と騒いでいる。大谷夫妻は昨年4月20日に第一子誕生を報告、この6月20日に第二子誕生をアナウンスした。これら誹謗中傷コ...

    記事全文を読む→
    カテゴリー:
    スポーツ
    2026年06月24日 11:30

    一発出たら同点。3-7と4点をリードされて迎えた7回裏、二死満塁の場面。この日いちばんの勝負どころで、広島・新井貴浩監督がベンチから送り出した代打は捕手・石原貴規だった。結果は空振り三振。最大の山場でなぜ、より長打を見込める打者を送り込まな...

    記事全文を読む→
    カテゴリー:
    スポーツ
    2026年06月24日 13:30

    これはトレードのショーケースなのだろうか。そう思ってしまったのは、阪神タイガースの梅野隆太郎捕手が2軍から再昇格し、6月23日のヤクルト戦に即スタメン出場して攻守に高い能力を見せつけたことだ。1-0とリードした5回に二塁打を放ってチャンスメ...

    記事全文を読む→
    カテゴリー:
    注目キーワード

    人気記事

    1. 1
    2. 2
    3. 3
    4. 4
    5. 5
    6. 6
    7. 7
    8. 8
    9. 9
    10. 10
    最新号 / アサヒ芸能関連リンク
    アサヒ芸能カバー画像
    週刊アサヒ芸能
    2026/6/23発売
    ■650円(税込)
    アーカイブ
    アサ芸プラス twitterへリンク