社会
Posted on 2024年08月05日 09:55

鹿児島県警「内部告発圧殺」は警察庁のお墨付きだった(2)「警察の伝統。お家芸だ」

2024年08月05日 09:55

 このキャリアが首をかしげるのは、県警本部長の相談相手が警察庁官房長で、特別監察に入った監察チームがトップの首席監察官・片倉秀樹をはじめ、人事課の課長補佐も監察官も官房長の指揮下にあるからだ。

 言ってしまえば、「わかった。やれ」とゴーサインを出した後で、「一体何をしているんだ」と叱りつけるようなもの。この対応を疑問視しているわけである。別の警察幹部は、さらに踏み込んで、こう話す。

「官房長といえば、警察庁ナンバー3の立場にある最高幹部にして、長官の最側近。当然ながら、隠蔽捜査は長官も承諾済みだ」

 露木康浩長官も、監察チームを統べる太刀川浩一官房長も、この一大事の当事者だというのだ。

「だからこそ、動きが早かった。事が公になるや野川本部長に長官訓戒を出したのは、そのためだが、問題が内閣や国家公安委員長を巻き込んだ話になると、それだけで済ますわけにはいかない。で、今度は完全なるトカゲの尻尾切りに走った。それが今回の特別監察。警察庁は関係ないというアリバイ作りだ」

 官房長ではなく、長官みずからが「わかった。やれ」と言った後で、「何をしているんだ」と叱りつけるだけでなく、前言をなかったことにしようとしているわけだ。こうなると、警察はトップからして腐りきっているというほかない。

 警察官の服務規程には「公共の利益のために勤務し、かつ、その職務の遂行に当たっては、不偏不党かつ公平中正を旨とし、全力を挙げてこれに専念しなければならない」「権限を濫用してはならない」云々と明記されている。最高幹部らが率先して守るべきなのに、こぞって身内の不祥事の隠蔽に走るのはなぜか。

「警察の伝統。お家芸だ」

 と明かすキャリアOBが続ける。

「どこの官庁もそうだが、捜査権のある検察や警察は、特に身内の不祥事に敏感で、すべてなかったことにするのが基本。だからこそ、つい先頃、検察庁が元検事正を逮捕した件は不可解なのだが、それはさておき、警察の場合、警察幹部を養成する警察大学校の講義が、そのことを象徴している。講義で真っ先に触れるのが、身内の不祥事対応について。『逮捕はしない、公表はしない、そっと辞めさせる』と教示される。つまり、不祥事隠蔽の講義なのだが、これは教材には載せず、あくまでも講師の口頭によるものだが、徹底的に叩き込まれるだけに身にしみる」

 こうした講義を受け、警察大学校を卒業した者たちが幹部の階段を昇っていき、やがて警察中枢を構成していくことになる。

 キャリアOBによれば、ある官房長などは県警本部長からの電話に対し、「なかったことにするんだよ! 当たり前だろう」と怒鳴り上げたことがあったという。

 こんな組織に捜査権という強大な公権力を委ねておいていいものなのか。

時任兼作(ジャーナリスト)

全文を読む
カテゴリー:
タグ:
関連記事
SPECIAL
  • アサ芸チョイス

  • アサ芸チョイス
    社会
    2025年03月23日 05:55

    胃の調子が悪い─。食べすぎや飲みすぎ、ストレス、ウイルス感染など様々な原因が考えられるが、季節も大きく関係している。春は、朝から昼、昼から夜と1日の中の寒暖差が大きく変動するため胃腸の働きをコントロールしている自律神経のバランスが乱れやすく...

    記事全文を読む→
    社会
    2025年05月18日 05:55

    気候の変化が激しいこの時期は、「めまい」を発症しやすくなる。寒暖差だけでなく新年度で環境が変わったことにより、ストレスが増して、自律神経のバランスが乱れ、血管が収縮し、脳の血流が悪くなり、めまいを生じてしまうのだ。めまいは「目の前の景色がぐ...

    記事全文を読む→
    社会
    2025年05月25日 05:55

    急激な気温上昇で体がだるい、何となく気持ちが落ち込む─。もしかしたら「夏ウツ」かもしれない。ウツは季節を問わず1年を通して発症する。冬や春に発症する場合、過眠や過食を伴うことが多いが、夏ウツは不眠や食欲減退が現れることが特徴だ。加えて、不安...

    記事全文を読む→
    注目キーワード
    最新号 / アサヒ芸能関連リンク
    アサヒ芸能カバー画像
    週刊アサヒ芸能
    2025/7/22発売
    ■620円(税込)
    アーカイブ
    アサ芸プラス twitterへリンク