芸能

おしゃべり美女の解放区・ひと言いわせて〈新田恵利〉私ね、ガンって生真面目な人がなるものだとばっかり‥‥

 アサ芸読者の皆さん、こんにちは! 新田恵利です。

 早いものでおニャン子クラブの会員ナンバー4番としてデビューしてから39年。来年は記念すべき40周年を迎えます。「僕と同じ世代!」なんて懐かしく思ってくださる読者の方もいらっしゃるのではないでしょうか? まあ、年を重ねると当たり前だと思っていたのがそうではないんだということに気づかされるのも多々ありますよね。

 特に健康。昨年はひとつ年下の主人にガンが見つかり、夫婦にとっては人生において大きな山場となった1年でした。

 主人が罹患したのは悪性リンパ腫。血液のガンと呼ばれる病気です。でも、実のところ私、最初のうちは半信半疑だったんですよ。

 ちょうど4月のなかばぐらいに「喉が痛い」というので、アレルギー性のものか風邪じゃないかと思っていたんです。それに、前の年に主人はコロナにかかっていたので「またコロナ〜!? 勘弁してよ〜」なんて軽く捉えていて。

 大学病院やガンセンターで細胞検査をしてもらうことになったのですが、結果が出るまでの間もネット検索で悪性リンパ腫について調べたりしたんです。

 よく、兆候だとか症状っていうじゃないですか。で、そこに書いてあったのが、「寝汗をひどくかく」とか、「食欲減退」、「体重が減った」というような内容だったんですが、主人の場合、就寝中に特に汗もかいていないし、痩せるどころか太っているし、食欲も以前と変わらぬまま。どれひとつとして当てはまるものがなかったんですよ。それと、これはちょっと偏見かもしれないんですけど‥‥私ね、ガンって生真面目な人がなるもんだと思っていたんです。

 でも、主人は生真面目でもないし、どちらかといえばだらしのないタイプ。だから「絶対に何かの間違いに決まってる!」って勝手に思い込んでいたんです。

 今から考えてみれば、それは私が現実を受けいれられなくて都合のいいように解釈していたからかもしれませんね。数週間後に医師から「やはり悪性リンパ腫だった」と告げられました。

 当の本人はすでに腹をくくっていた様子でしたが、私の方はそれでもまだ信じられなくって。

 入院して抗がん剤治療を受けている姿を見た時にようやく〝ああ、主人はガンなんだ〟と実感しました。

 抗がん剤の治療は3週間ごとに数クール行うのですが、初めの1週間がとにかくつらそうなんです。

 3週目ぐらいになると、もうすっかり元気になったように見えるんですが、次の投与がまたスタートすると、またグッタリと具合の悪い日が続きます。主人は1週目のつらい時には言葉で「つらい」とか「もう嫌だ」と吐露していましたが、それを支えている私の方も結構、心身共に疲れちゃって。「ガン家族は第2のガン患者」という言葉がありますけど、本当にその通り。吐き気や苦しみに耐えながら横で唸り声を上げている主人に対して、どうにもしてあげられないジレンマもありますし、腫れ物に触るように気を遣ってしまうんです。実は私も数年前に脳動脈瘤で治療を受けたんですけど、もう自分が病気の時の方が何倍も楽でしたもんね、気持ちが。

 今は2人に1人がガンに罹患する時代。だからガンをテーマにしたドラマや映画、ドキュメンタリー作品も多いんですよね。それまでは何気なく見ていたんですが、家族にガン患者がいると、ドヨ〜ンと部屋中の空気が重たくなっちゃって(苦笑)。一緒にテレビを観ている時に、余命いくばくかの物語だとか亡くなっちゃうシーンがあったりすると、「今、主人はどんな気持ちで観てるのかな」と、ヒヤヒヤ。もうこっちは「どういう顔をしていればいいんだろう?」なんて戸惑っちゃって(苦笑)。ここでチャンネルを替えたら余計、マズいよなぁとか(苦笑)。

 抗がん剤治療の副作用には味覚障害もあるんですが、主人の場合はとにかく「カレー」の一択でしたね。嗅覚障害は出なかったのですが、旨味などはわからなくなってしまって、スパイシーでパンチのあるカレーの口当たりがよかったみたいです。だからもうね、嫌っていうぐらい連日カレーを作ってました、当時(笑)。

 そんな私の気持ちを察してか、主人が「恵利ちゃん、もう味覚とかもないから、カレー作らなくてもいいよ」と言ってくれてたので、途中からレトルトにしちゃいましたけどね(笑)!

 それと、元々スイーツ男子で、デザートには目がなかったんですが、それでも食べたいという気持ちになるのは「あんみつ」だけ。

 私が仕事を終えて帰宅する途中、デパ地下から「何が食べたい?」と聞くと、決まって「あんみつ」。これも治療中はずっと変わらなかったですね。

 これまで普通に口にしていたものを受け付けなくなるので、水も麦茶もダメになっちゃったんですよ。唯一、飲めるのが1000円もするお高〜い搾りたての果汁ジュース。「こんな高いジュース、滅多に買うことなんてないから、期間限定だよ」なんて冗談を言って買ってましたけどね(笑)。

 でも、食べたい時に食べたいものが食べられればそれが一番いいことなので。まったく何も口にしないより、少しでも食べたり飲んだりできることがうれしかったですね。おかげさまで主人は抗がん剤治療が奏功して寛解いたしました。

 ホッとしたのも束の間、我が家の台所事情は大変なことに。医療費を計算してみたら、入っていた保険では全然、足りないことがわかったんです。標準治療でもガンの治療費には月に30万〜40万と、大金がかかります。高額医療費制度で後にいくらかは戻ってきますが、一時的な出費がドカンと大きい。治療中は働けない期間も長いですから、自営の方で一家の大黒柱であれば、キツいでしょう。

 それと、ガンは再発のおそれがある病気なので、再発時にもいくらかまとまった金額が下りる保険に加入しておくといいと思います。

 保険の見直しもそうですが、食生活も見直さなくっちゃ。私、「カレー」「あんみつ」「1000円ジュース」に毎日付き合っていたら、5キロも太っちゃったんです(笑)!

新田恵利(にった・えり)68年生まれ、埼玉県出身。85年に「夕やけニャンニャン」(フジテレビ系)で芸能界デビュー。86年、ソロ曲「冬のオペラグラス」が大ヒット。その後も女優、執筆活動を続け、21年に自身の経験を元に「悔いなし介護」(主婦の友)を刊行。昨年より淑徳大学で客員教授も務める。

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