芸能

おしゃべり美女の解放区・ひと言いわせて〈蝶花楼桃花〉弟子入り志願したらあっさり即「採用」に

 アサ芸読者の皆さん、こんにちは~! 噺家の蝶花楼桃花と申します。

 25歳で師匠の春風亭小朝に入門し、真打となったのが今から3年前の春のこと。女性落語家として真打になったのは落語協会で10人目という狭き門だったのですが、ここ数年で落語界にも女性が増えてまいりました。

 といっても、男性の落語家が1000人ぐらいのところ、女性は東西合わせて40~50人なので、まだまだ少ないんですけどね。

 そもそも、私が落語家の道をなぜ目指したのかと言いますと、子供の頃からミュージカルが大好きで「将来は宝塚に入りたいっ!」って憧れていたんです。でも、背が小さいから受けられなくって‥‥。

 そんな時、出会ったのが自国の伝統芸能である落語だったんです。もう、こんなに素晴らしい世界があるんだ! って、ドンドンのめり込みました。

 でね、うちの師匠ですよ! 私、初めて師匠を見た時、スポットライトが1人だけ多いんじゃないかっていうぐらい光り輝いて見えたんです。単純に色白で金髪だし‥‥、みたいなこともあったかと思うんですけど(笑)。でも、燦然と後光が差していたんですよ。なんかすごい人が出てきたぞって思って。

 しかもですよ、薄いピンク色の着物に羽織姿。「うおーっ! でっかい赤ちゃんじゃん!」って、もう頭の中で処理しきれないぐらいのインパクトを受けていたら、今度はわ~っと淀みなく落語をしゃべるわけですよ。それがまた初心者の私の中にストンと落ちてきたんです。言葉のすべてを理解できたというか。とにかく圧倒されまくって、そこから師匠を追いかけるようになったんです。

 この師匠だったら、女性落語家を育ててくれる柔軟な考えを持っているに違いない。さらに自分が芸人として生涯好きでいられるっていう、この2つを兼ね備えていたのが私にとっては春風亭小朝という人だったんです。だから、第二候補も第三候補も考えず、無我夢中で弟子入り志願をしました。

 落語家の弟子入りって、基本的には断られるらしいんです。「親を連れてきなさい」とかね。事前に下調べをした本にもそんなふうに書いてあったし、断られるのは承知の上で、「何度でも行くぞ~!」って、めちゃめちゃ気合いを入れて行ったんです。

 ところが、うちの師匠はあっさりその場で採用。さらに、「え? 断られるんじゃないの? とか、親連れてこいとか、そういう儀式みたいのあるんじゃないの?」って、うれしいパニック状態の私にひと言。「明日から来てね」と(笑)。

 翌日、現場に行ったら、「キミ、“ぽっぽ”っていう名前になったから」って、いきなりの命名。「はい、ぽっぽ、こっち来なさい。着物の畳み方教えるから」。兄弟子に紹介する時も「ぽっぽだから、この子」「あっ、はい。ぽっぽです。よろしくお願いしますっ!」みたいな(笑)。

 この前座名の由来は、私が師匠のところに入門に頼もうって乗り込んでいった日が、世界平和記念日だったから。平和の象徴の鳩にちなんでつけたそうです。

 それからは生活が一変。そもそも落語の修業自体がブラック企業レベルで、ホントに自分の自由時間なんて1秒もない世界なので。365日、寄席に行きますからね。だから私、親友の結婚式も全部行けなかったですし、音信不通になってた時期もあって(笑)。「由佳(本名)生きてんの?」「何してんの?」って心配されたりもしました(笑)。

 つらいといえばつらいですけれど、逆にいうと修業中の5年間を耐えれば一人前にしてもらえる。そういう希望のほうが私は大きかったですね。というのも、入門前の私はいろいろなオーディションも受けまくって落ちまくっていたんです。AKB48の1期生の募集にも8歳ぐらい年齢をサバ読みして応募しました。当然、落とされました~(笑)。

 入門した頃、師匠がね、こう言ったんです。「楽屋の荷物はすべてキミが持ちなさい。口でくわえてでも持ちなさい」。楽屋に行ったら絶対に手を抜いちゃいけない。みんな前座修業を経験しているんだから手を抜くポイントなんてお見通しなんだ、という意味だと思いました。そのうちに「こいつはズルくない」って認めてもらえる時が来る、と。

 その言葉を肝に銘じて、とにかく面倒くさいほう、つらいほうを全部選ぶようにしたんです。そうするうちに、師匠が言った通り、兄さん方が「何、こいつ。根性あるじゃん」みたいな感じで少しずつ認めてくれるようになってきたんです。そういうことの積み重ねで、楽屋の信用がいただけたんじゃないかと今でも感謝しております。

 食事も兄さん方と同じ量を食べて10キロぐらいぶーっと太ったんですよ(笑)。もう、とにかく食べまくりましたね。

「ぽっぽ、おまえちっこいのによく食うな」って言われて「はい」って。見た目もね、いつもすっぴんで髪の毛も角刈りみたいな感じでした。

 もし、あの時、私が楽なほうを選んでいたら‥‥。甘えた気持ちがちょっとでも出た瞬間にたぶん、修業は終わりだったと思います。みんなから仲間と認めてもらえなかったでしょうね。

「口でくわえてでも持ちなさい」という師匠の言葉は私が落語の世界で食べていく覚悟を決めさせてくれた言葉。助けてくれたって、今でも心から感謝しているんです。

蝶花楼桃花(ちょうかろう・ももか)東京都出身。2006年、春風亭小朝に入門。前座名は「ぽっぽ」。2011年、二ツ目に昇進。「ぴっかり☆」に改名。「浅草芸能大賞」新人賞を受賞するなど活躍。2022年3月、真打昇進。2019年3月に七代目蝶花楼馬楽が亡くなって以来途絶えていた「蝶花楼」の亭号を復活させ、「蝶花楼桃花」に改名。出囃子は「仙桃」

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