政治

森喜朗「オリンピック大いに語る」(3)2031年にラグビーW杯開催も

 それにしてもなぜ、森氏はここまでスポーツに入れ込むのか。著書ではその原体験にも迫っている。幼少期から青年期にかけてラグビーに夢中になる森青年の回想は実に鮮明だ。父・茂喜氏の影響でラグビーに憧れた森氏は父と同じく早稲田大学に進学。ところが、わずか4カ月で病気のために退部に追い込まれる。これが、森氏のスポーツに対する恩返しの「原点」だった。

「私の父や恩師である早稲田大学のラグビー部の監督を務めた大西鐵之祐先生は私がラグビー部を退部した時に何も言うことはありませんでした。私自身は忸怩たる気持ちがあったし、おそらく父も大西先生も同じだったと思います。ただ大西先生は『長い人生の中でいつかラグビーに恩返しをしろ』とだけ私に授けてくれました。その思いは今も変わりません。長年スポーツを取材しているジャーナリストや運動部の記者の方々以外は、こうした私のラグビー選手としての原点を知らないことでしょう。政治家になって文教畑を長年務めてきた中で、ラグビーが置かれている状況を知るにつれて、全国に芝生のあるラグビー場を作りたい─という私のスポーツ振興への情熱を、ぜひ、次世代に引き継いでもらいたい。特に三面記事を扱う社会部の記者は、権力の監視を振りかざして、組織委員会の会長である私の揚げ足を取ろうと、虎視眈々と狙っていた。それが、女性蔑視発言での猛烈なバッシングにつながったと思います。その構図は私が01年に総理を退陣する際の『神の国発言』と何にも変わっていません。発言の一部を切り取ってそれを大々的に拡散する。そして切り取られた言葉が独り歩きして、批判の声が大きくなれば、誰も反論ができません。ましてやオリンピックやワールドカップのような国際的なスポーツイベントではトップに対する風当たりの強さは、政治家をしていた時の比ではありません。今後、私や川淵三郎さんのようにスポーツ界を牽引しようとするリーダーが現れるかどうか? いつまでたってもリーダーを徹底的にこきおろすマスコミの風潮には、いささか危機感を覚えています」

 さらに著書の中では、2031年に日本で再びラグビーワールドカップが開催される可能性についても言及している。詳細は、著書を確認してほしいが、「ラグビーワールドカップ2019がラグビー界にもたらした影響は絶大だった」と森氏は感慨深げだ。

「私はかつてワールドラグビーの前身組織であるIRBの幹部と面会した時に、『アジアをまとめてくれ』とお願いされました。それは英国を中心とする宗主国から見るとアジアは、スポーツ後進国と見くだされていました。実際、ラグビーワールドカップ2019が決まってからも『アジアの国でワールドカップができるのか』との疑念があったようです。ところが、蓋を開ければ、チケットは実売率が99.3%を誇り、全国12カ所での広域開催は大盛況に終わりました。IOCの関係者の中には、IRBの関係者もかなりいますから日本でのラグビーワールドカップ成功を横目に見て日本に対する認識を改めたようです。日本の国民も『ラグビーがこんなに面白いスポーツだったのか』といまだにラグビーのリーグワン人気も高まったままです。今後、2027年に秩父宮ラグビー場が移設されれば再び脚光を浴びるでしょう。

 すでにその機運は高まっています。早ければ、2031年には再び日本でラグビーワールドカップが開催される運びとなりそうです。それほど日本のスポーツ界ひいては、日本のスポーツ大会の運営能力は高く評価されています。私自身も極めて可能性は低いが、元気なうちにもう一度、世界中のトップラグビー選手が楕円球を追う姿を見届けたい。そう思いながら日夜、スポーツに対してまだまだ恩返しができないか考えています」

 今回のパリ五輪も会場での観戦はかなわなかったが、連日テレビで日本人アスリートの活躍に目を細めていたという。8月28日からは、森氏が、オリンピックと肩を並べるべく地位向上に奔走したパラリンピックも開催される。今こそ、そのすべてを知る森氏の証言に耳を傾けるべきタイミングなのかもしれない。

森喜朗(もり・よしろう)1937年生まれ。早稲田大学卒業。1969年、衆院議員初当選。2000年に内閣総理大臣に就任。2005年、日本体育協会会長に就任。2006年、日本ラグビーフットボール協会会長に就任。2010年、ラグビーワールドカップ2019組織委員会副会長に就任。2012年、代議士引退。その後、東京オリンピック・パラリンピック競技大会組織委員会会長、日本財団パラリンピックサポートセンター最高顧問、日本ラグビーフットボール協会名誉会長などを歴任。

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