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Posted on 2024年08月24日 05:56

二宮清純の「“平成・令和”スポーツ名勝負」〈村上宗隆「予知夢」の5打席連続弾〉

2024年08月24日 05:56

ヤクルトVS中日」セ・リーグ公式戦・2022年8月2日

「ボールが止まって見えた」

 そんな名言を残したのは“打撃の神様”と呼ばれた川上哲治(巨人)だ。

 通算2351安打、通算打率3割1分3厘。首位打者に5回、本塁打王に2回、打点王に3回輝いている。

 川上が先の言葉を口にしたのは、1950年、シーズン中に行った多摩川グラウンドでの“特打”の後だ。2軍投手を相手に、一心不乱にバットを振り続けているうちに、いわゆる明鏡止水の境地に達したのだ。

 翌51年、川上は自己最高の3割7分7厘という高打率で自身3度目の首位打者になった。

 この時の村上宗隆(東京ヤクルト)も、熊本の大先輩である川上と同じ心境だったのではないか。

 2022年7月31日、甲子園。阪神戦の7回表、左の横手投げ・渡邉雄大からレフトスタンドに35号を放った。

 2本目の36号は1対2で迎えた9回表1死。左のクローザー岩崎優のストレートをライトスタンドに叩き込んだ。

 この一発で同点に追い付いたヤクルトは、延長11回表、2死一塁のチャンスをつくり、打席には村上。右腕・石井大智が投じた高めの変化球を、今度は浜風に乗せてレフトポール際に運んだ。

 自身初となる1試合3本塁打。村上の孤軍奮闘により、ヤクルトが4対2で逆転勝ちを収めた。

 この時点で、4打席連続本塁打達成者は13人いた。

 青田昇(56年)、王貞治(64年)、長池徳二(67年)、醍醐猛夫(71年)、羽田耕一(74年)、松原誠(76年)、髙木守道(77年)、トニー・ソレイタ(80年)、谷沢健一(81年)、ランディ・バース(86年)、ロデリック・アレン(90年)、ダグ・ジェニングス(95年)、ナイジェル・ウィルソン(97年)─。

 移動日を挟んで東京に戻ってきたヤクルトは、8月2日、本拠地の神宮に中日を迎えた。

 中日の先発はエースの柳裕也。前年、最優秀防御率と最多奪三振のタイトルを獲得した28歳の右腕だ。

 1回表、3番・山田哲人の先制ソロが飛び出し、スタンドの興奮がさめやらない中、村上が打席に入る。

 カウント2-1から柳が投じたのは109キロのカーブ。打ち気にはやる村上を、緩いボールでかわそうとしたのだが、ゾーンに入っている村上に、その手は通じない。快音を発した打球は、ライトスタンド上段へ。4打席連続本塁打は史上14人目、ヤクルト球団としては、史上初の快挙だった。

 ここまでくれば、誰だって新記録を見たくなるだろう。3回表、スタジアムに張り詰めた空気が漂う中、村上が左打席に入った。

 1死一塁。柳はフルカウントからチェンジアップを投じる。ややタイミングを崩されかけたが、外のボールを右手1本で左中間スタンドに放り込んだ。この村上の2発がきき、試合は5対0でヤクルトが勝った。

「夢でホームランを打つのを見たので、もしかしたら打てるんじゃないかと思った」と村上。夢での体験を現実世界で追体験することを「予知夢」というが、村上自身、自らの神秘的な力に驚いている様子だった。

 神様、仏様、村神様─。

 このシーズン、村上は打率3割1分8厘、56本塁打、134打点。史上最年少(22歳8カ月)で三冠王に輝いた。本人は26年シーズンからのMLB挑戦を視野に入れている。

二宮清純(にのみや・せいじゅん)1960年、愛媛県生まれ。フリーのスポーツジャーナリストとしてオリンピック、サッカーW杯、メジャーリーグ、ボクシングなど国内外で幅広い取材活動を展開。最新刊に「森保一の決める技法」。

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