芸能

小倉久寛「三宅裕司がすごくおもしろくて」/テリー伊藤対談(2)

テリー でも小倉さんは、好きな芝居の世界に入って、この年になるまで唯一無二の存在じゃないですか。幸せな男ですよね。

小倉 はい、幸せだと思います。でも実は僕、人前で芝居やパフォーマンスをやりたくて入ってきたわけじゃないんですよ。

テリー えっ、そうなの?

小倉 中村雅俊さん主演の「俺たちの祭」っていうドラマがあって、演劇青年の話だったんですよね。劇団に入って、稽古して、その後みんなで居酒屋へ行って飲んで騒いでっていう、それが楽しそうだったんですよ。

テリー へぇ。

小倉 当時ちょうどオイルショックで、なかなか就職が決まらなくて、「どうせなら楽しいことやろう」と思って。それで雑誌の「ぴあ」を見たら、「大江戸新喜劇 旗揚げ公演」というのが目に飛び込んできて、見に行ったら三宅裕司が主演で、すごくおもしろくて、「あ、ここ楽しそうだな」と思って入っただけなんですよ。

テリー そうなんだ。

小倉 だから、芝居で食っていくぞとか、この世界で成功するぞなんて気持ちは全然なくて、ただ稽古して、その後に飲んで騒いでっていうことぐらいしか考えてなかったんですよ。

テリー 実際に劇団に入ってみてどうだったんですか。

小倉 楽しかったんですけど、初舞台なんかは全然ダメでしたね。バーテンダーの役で、お客さんの前に行って、「いらっしゃいませ」「ママ、これ飲みました?」って言うだけだったんですけど、それができなくて。

テリー セリフが出ないんですか。

小倉 いや、セリフは出るんですけど、動きと合わせるとうまくいかない。1カ月の稽古の間に100回か200回、そればっかりやらされましたよ。「こんなこともできないのか」って、ものすごい反省しました。

テリー じゃあ初舞台は挫折というか。

小倉 舞台袖で「あぁ、もうダメ。向いてない」とか言ってましたね。そしたら、ちょうど横にいた三宅さんが、「今ここでそんなこと言うな。後で何でも聞いてやるから」って、抱きしめてくれたんですよね。

テリー へぇ、何それ。その時、三宅さんは主演?

小倉 そうです。だから僕みたいな芝居もできないヤツなんか相手にしなくてもいいんですよ。でも、その時からずいぶん気遣ってくれてはいましたね。

テリー それは三宅さんに何か感じるものがあったんでしょうね。その最初に入った「大江戸新喜劇」から、今度は「劇団スーパー・エキセントリック・シアター(SET)」に入るじゃないですか。

小倉 「大江戸新喜劇」に入って、1年ぐらいで「SET」ができたんですよ。

テリー SETってどのぐらいでボーンと行くんですか。当然、経済的にも厳しい時期があったと思うんですけど。

小倉 大学を卒業して大江戸新喜劇に入って、SETができた時は25歳になってたのかな。それでお客さんが増えてきて、アルバイトしなくても何とかなるのかなと思ったのが30ぐらいですかね。

テリー そうか。じゃあ5、6年は下積みみたいなのがあって。その後、お客さんがどんどん増えて、世の中的にも有名になっていきますよね。

小倉 不思議な感じでしたね。さっきも言ったように「この世界で何としても」っていうつもりで来てないので、「えっ、まさか。信じられないな」っていう、奇跡が起こってるような感じでしたね。

テリー 一大ムーブメントで、チケットも手に入らなかったですよね。

小倉 そういう時期もありました。そんな時に岸谷(五朗)、寺脇(康文)が入ってきて。それで輪をかけて、どんどんお客さんが増えていきましたね。

ゲスト:小倉久寛(おぐら・ひさひろ)1954年、三重県生まれ。1979年、「劇団スーパー・エキセントリック・シアター」の旗揚げメンバーに。80年代中盤からバラエティー番組を中心にテレビ出演が増え、1986年にはNHK「ヤングスタジオ101」の司会、「笑っていいとも!」(フジテレビ系)にレギュラー出演した。1989年、「夢見通りの人々」で映画初主演。その他の主な出演は、映画「空母いぶき」「Fukushima 50」、ドラマ「おかしな刑事シリーズ」(TBS系)、NHK大河ドラマ「翔ぶが如く」「功名が辻」「青天を衝け」、NHK朝の連続テレビ小説「ほんまもん」「らんまん」など。2月21日(金)〜3月2日(日)、紀伊國屋サザンシアターTAKASHIMAYAにて「小倉久寛 生誕70年記念 コントライブ ザ・タイトルマッチ3 お楽しみはこれからだ 〜You ain’t heard nothin’yet〜」公演。

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