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記事全文を読む→「自称・泣ける映画」安易な量産にはうんざりだ!/大高宏雄の「映画一直線」
邦画のテレビスポットが、涙を誘うものばかりだ。ネットでそのような意見を見た。もっともだと思う反面、職業柄からして、その裏にある邦画の事情も気になってしまう。
同じ現象なのだろう。最近の映画館で流される予告編には「泣ける」という文字がやけに多い。邦画の実写作品中心で、ある時など、3本ぐらい続いたことがある。うんざりしたこともたびたびである。
「涙、泣ける」は、興行と密接な関係を持っている。昔からだ。日本人が好むジャンル、テイストなのであろう。それが今も、違った形ではあるが、脈々と息づいている。変わらないことのほうが興味深い。
もちろんこのジャンルには、いろいろな内容がある。ひとつの枠に決めつけることはできない。しかも見る人それぞれに、反応は違う。同じシチュエーションでも泣く人、泣かない人に分かれる。
いい悪いではない。笑いと同じく、涙についても人それぞれの性格、感情表現、育ってきた環境などによって、異なった反応を見せるということである。
だから「泣ける映画」が全てヒットするわけではない。つまり、ヒットする作品とヒットしない作品に分かれる。ただ、興行の安定度は比較的、高い。これが、連発されている大きな要素のひとつである。
今年に入って、2本の作品が大ヒットした。公開順に「366日」と「ファーストキス 1ST KISS」だ。興収では前者が25億7000万円、後者が27億7000万円(4月27日時点)を記録している。
2作品ともに、広範囲にわたったクチコミの理由のひとつが「泣ける」だ。その意味合いは異なるが、どちらも恋愛ものという点で共通している。だから若い観客、特に女性が多い。「泣ける」と「恋愛」は結びついている。俳優の人気が、これに加わる。
ただ、それだけでは大ヒットの領域に踏み込むことはできない。ここで、見た人の心に深く突き刺さる要素が大切になってくる。「泣ける」という表層的な反応が映画のトータル性の中、いかに見る人の気持ちを深層の領域で鷲掴みできるか。
「366日」なら人を思う気持ちの深さ、尊さが、それを切実に歌い上げる主題歌とともに、観客の心を深くえぐってくる。「ファーストキス」なら、独特の会話劇と予想を超えた話の展開が、見る者の気持ちをざわつかせる。
「涙、泣ける」映画が多くなるのは、企画の怠慢だと思う。押しつけがましいと感じられるようになってしまっては、逆効果にもなろう。今がそのギリギリの段階ではないか。
「涙、泣ける」映画が悪いのではない。このジャンルが興行的に安定しているからといって、安易に多作化されるのがいちばん困る。だから揶揄される。先の2本の内容、成果からは、学ぶことが多いと思っている。
(大高宏雄)
映画ジャーナリスト。毎日新聞「チャートの裏側」などを連載。「アメリカ映画に明日はあるか」(ハモニカブックス)、「昭和の女優 官能・エロ映画の時代」(鹿砦社)など著書多数。1992年から毎年、独立系作品を中心とした映画賞「日本映画プロフェッショナル大賞(略称=日プロ大賞)」を主宰。2025年に34回目を迎える。
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