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江本孟紀「昔の大投手はおちょくった球を」/テリー伊藤対談(2)

テリー 江本さんはピッチャーだから聞きたいんですけど、僕はピッチャーの最盛期って、23歳から25歳だと思ってるんですよ。

江本 ああ。ある程度はそうでしょうね。

テリー そうですよね。そうすると1年休んだ大谷(翔平)が、まあ今年投げるのかわからないですけど、そんな甘くないですよね。

江本 甘くないです。僕はね、実は毎年3月はアリゾナにいて、大谷をずっと見てるんですよ。

テリー あ、そうなんだ。江本 そんな解説者いませんけど。

テリー 今年も行ったんですか。

江本 今年はね、すみません、お金がなくて。円安で行けなかったんですけど(笑)。

テリー それ、ずっと自腹で行ってたの?

江本 もちろん、自腹です。

テリー えらいね、さすが江本さん。

江本 いやいや。だから、好き勝手なこと言えるんですよ。下手に金出してもらうと言いたいこと言えませんから、自腹が一番いい。それで、言いたくないことは言わなきゃいいしね。

テリー そりゃ、そうだね。

江本 で、一昨年、WBCからアリゾナに帰ってきて、3A相手に大谷が投げてるのを見た時に、「あ、この投げ方だとヒジ壊すな」と思ったら、やっぱり壊れました。メジャーリーグは日本の野球とは微妙に違うんですよ。

テリー 何が違うんですか。

江本 変化球を投げたがるんですよ。そのためには、ヒジを縮めて投げるんですよ。壊れるんですね。

テリー へぇ。

江本 ちょっと話は飛びますけど、昔の大投手と言われる人たちは1試合120~130球投げますわね。そのうち力入れてる球、何球だと思います?

テリー ええ、どうだろう。

江本 半分ぐらいですよ。残り半分はおちょくった球を投げてるんです。そうじゃなきゃ9回投げられないんですよ。あんなアホみたいに、1回から力入れて投げたら壊れますよ。

テリー 開幕戦2戦目の佐々木朗希と一緒ですね。

江本 だから、佐々木はまだ(力を)抜くのを知らないんですね。もうちょっと抜けば、下手したら毎年20勝ぐらいしますよ。それぐらいピッチングっていうのは技術なんですから。例えば今の現役で一番勝ってる選手って誰だと思います?

テリー わかんないです。

江本 ヤクルトの石川(雅規)投手です。身長も小さくて170センチあるかないかですけど、180勝以上してるんですね。これはね、たぶんテリーさんでもバット持って振ったら当たると思いますよ。

テリー え、そうなの?

江本 ええ。おそらくストレートは130キロ前後ですから。ということを考えると、150も60も出すピッチャーはアホなんですよ、私に言わせれば。

テリー アハハハ。まあアホかどうかはわかんないですけど、そんなに出す必要はないと。

江本 そういうことです。もちろん、150で抑えられればいいんだけど。でも、今一番勝ち星がある投手は40過ぎの、そういう選手だということです。

テリー おもしろいな。

江本 だから、野球のピッチャーっていうのは技術なんですよ。1回から9回までムキになって投げる奴なんかいません。例えば、江川(卓)なんてホントに抜くのがうまいですから。「こいつは打たないな」と思ったら、ヘナヘナッとしたカーブを投げてストライクを取る。で、「打ってくるな」と思ったら、ピュッと速い球を投げるわけですよ。

テリー 頭がよければ別にスピードはいらない。

江本 私ももうちょっと頭がよかったら200勝ぐらいしたと思いますよ。最終的には100そこそこでしたけど。

ゲスト:江本孟紀(えもと・たけのり)1947年、高知県生まれ。高知商業高校、法政大学、熊谷組を経て、1971年、「東映フライヤーズ」(現・日本ハム)入団。同年、南海ホークス(現・ソフトバンク)移籍。1976年、「阪神タイガース」に移籍し、1981年、現役引退。1992年、スポーツ平和党より比例代表で出馬し、参議院議員初当選。2期12年を務めた。現在はサンケイスポーツ、フジテレビ、ニッポン放送を中心にプロ野球解説者として活動。YouTubeチャンネル「エモやんの、人生ふらーりツマミグイ」配信中。主な著書に「プロ野球を10倍楽しく見る方法」(ベストセラーズ)、「おれ、紆球曲球」(日之出出版)、「監督原辰徳研究」(徳間書店)など。最新刊「昭和な野球がオモロい! 」(マガジンハウス/日之出出版)発売中。

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