薬物使用(ドーピング)を解禁して世界一を決める新たなスポーツ大会「エンハンスト・ゲームズ(進化した大会)」の運営団体が5月21日午後(日本時間22日午前)、第1回大会を来年5月に米ラスベガスで開くと公表した。
従来、国際オリンピック委員会(IOC)を筆頭にドーピングを禁じ、違反したアスリートには厳罰が科せられる。その後の選手生命が絶たれるほどのダメージを受けることになるのだ。
しかしこの団体によると、大会ではステロイド系筋力増強剤など、世界反ドーピング機関(WADA)が使用を禁じるが、医療目的では法的に認められている薬物の使用を認めている。競技前からどんな薬物を摂取しているか、医師が管理するという。
第1回大会は競泳(50・100メートル自由形とバタフライ)、陸上(100メートル、110メートル障害)、重量挙げ(スナッチなど)を採用。男女別に争い、陸上100メートルと競泳50メートル自由形で世界記録を抜くタイムを出した選手には、100万ドル(約1億4300万円)の賞金を出すのだと。
資金面では米トランプ大統領の長男ジュニア氏らが支援を表明しており、すでに1000万ドル(約14億3000万円)を確保したとしている。スポーツジャーナリストはこの大会をどうみるのか。
「正直、現在のWADA基準の薬物検査では風邪薬や栄養剤、ビタミン剤などサプリメント類などでも検査に引っかかるほど厳格です。それに対して、世界最高峰のボディビル大会『ミスター・オリンピア』を主催するIFBBの基準にのっとった大会は、半ば薬物公認。なので、あそこまで芸術的な肉体を作り上げ、アスリートの限界を突破することができる」
以外にもこれ、五輪メダルクラスのトップアスリートと各競技団体がスルーできない大会になりそうで、
「ドーピングを解禁したことで、どこまで記録が伸びるのかが注目の的に。賞金が出る陸上の100メートルの世界記録は、ウサイン・ボルト(ジャマイカ)が2009年8月に出した9秒58。水泳の50メートル(長水路)はセーザル・シエロフィーリョ(ブラジル)が2009年12月に記録した20秒91です。もし両方の記録、そして他の競技・種目での世界記録も大幅に更新されるようなら、五輪での金メダル獲得よりも、賞金と記録を求めて参戦を表明するトップアスリートが続出するのでは」(スポーツ紙記者)
2028年のロス五輪を前に、スポーツ界に大変革が巻き起きるかもしれない。
(高木光一)