「従来と同じ屋外型スタジアムで、2034年頃の開業を目指す」
ZOZOマリンスタジアムに代わり、商業機能を拡張させた「365日、楽しめるスタジアム」建設の基本構想を発表した千葉ロッテに投げかけられる疑問がある。「なぜ屋根をつけないのか」だ。
1990年に開業したZOZOマリンスタジアムは2025年で35年目を迎え、老朽化が著しい。施設を所有する千葉市は今年5月、公募型基本構想案として、幕張メッセ駐車場跡地への移転と建て替えプランを発表。スタジアム整備費は約600億円、周辺インフラ整備50億円を合わせ、総額650億円を見込んでいる。
かつての概算では鉄鋼やセメントの価格高騰、海外からの資材輸送費増、職人不足による人件費高騰を十分に織り込めず、当初見積もりは500億円前後にとどまった。それが現在は建設資材価格や人件費の高止まりを反映し、約650億円に膨らんでいる。
資金調達にあたっては、国の補助金や企業寄付、ロッテ球団を含む民間投資を積極活用するとしているものの、公的財源の負担割合は相当に大きい。1990年の完成以降、部分改修はあったものの、全面建て替えは見送られ続け、「コロナ禍前、物価高騰前に着手していれば、もっとコストを抑えられたはず」というタラレバ論が広がっている。
一方で「クラウドファンディングを活用してはどうか」というアイデアが散見されるが、数百億円規模の建設費をファンの寄付だけで賄ったスタジアムの例は事実上、存在しない。例えば大阪府吹田市のパナソニックスタジアム吹田では、サッカーJクラブや地元企業が寄付金やふるさと納税型クラウドファンディングを通じ、屋根を設置できる約138億円を調達したものの、これはJリーグ全体での取り組みであり、個別クラブが屋根や照明など一部設備の整備を後押ししたにすぎない。
それでもロッテ新球場の基本構想には「観客席上部への軒屋根設置案」が盛り込まれている。全席を覆うドームではなく、日差しや雨をしのぐ「ハーフカバー」型であれば、追加コストをある程度、抑えられる可能性がある。
ただし、構造設計や排水計画、風荷重対策などクリアすべき技術的課題は多く、詳細設計段階で追加予算を確保できるかが鍵となるだろう。
現状では「全面屋外型」を前提に、650億円の予算枠内で進めざるをえず、完全ドーム化にはさらに2000億円超の追加投資が必要だとされる。そのため千葉市と球団、設計チームがハーフカバー案の実現可能性を詰め、限られた予算でいかに観客の快適性を高めるかが、今後の最大の焦点となる。
(ケン高田)