大谷翔平が術後初めてとなる、実戦形式で打者に投げるライブBPを行ったのは、5月25日。そのおよそ3時間後、1番DHでメッツ戦に出場すると、18号ソロアーチを放ってみせた。試合を中継していた米メディア「ドジャースネーション」は「さっきまで97マイル(約156キロ)を投げていたのと同じヤツが打った。信じられない」と興奮ぎみに伝えたが、同時に大谷の今後に関する興味深い情報を報じていた。
「大谷の投手復帰に関するプランです。ロバーツ監督が5月24日の試合前に語った限りでは、オールスター後の7月中盤あたりになる。しかし、マイナー登板させる余裕はないみたいですね。故障者続出による投手不足のためではなく、『打者大谷』を試合から外すことができないためだそうです」(現地記者)
豪快な18号を見れば、ロバーツ監督の「打者大谷は外せない」気持ちはわかる。一般的な投手復帰プランでいうと、ライブBPを数回行い、その後、マイナーの試合に登板して実戦感覚を取り戻す。その上で休養などを挟んでメジャーリーグのマウンドへ…となるのだが、ロバーツ監督のコメント通りであれば、大谷の復帰は「ぶっつけ本番」ということになる。
18号アーチを実況中継した「ドジャースネーション」は、マーク・プライアー投手コーチのコメントを、試合前に紹介していた。
「ショウヘイは全てが例外。完全なる例外になるんで」
これはどういう意味かというと、改めて二刀流の特殊さが語られたのだ。
「打者出場の負担が、手術をした肘にどれだけ影響を与えるのか、そのデータがない。そのため、従来の投げるだけの投手の復帰マニュアルや練習メニューが当てはまらないんです。手探りでやっていくしかない、そして慎重にゆっくりやるしかないとして、早期の復帰を否定していました」(前出・現地記者)
二刀流復帰を報じる野球メディアに「待った」をかけたわけだ。
もっと言えば、エンゼルス時代の失敗も頭にあるようなのだ。大谷が1回目のトミー・ジョン手術を受けたのは、2018年10月1日。2020年シーズンに投手復帰したが、その年は球速が上がらないなど不完全登板で、肘の痛みによりILリスト入りする期間があった。
投手復帰は地区優勝が決まった後の消化試合で…そんな見方もできる。オールスター明けではなく、秋口の消化試合が復帰の舞台となるのであれば、打者大谷はさらに打ちまくるしかない。
(飯山満/スポーツライター)