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記事全文を読む→小川邦和「監督1年目は負けるたびにヤカンが宙を舞ったが…」/俺だけが知る長嶋茂雄の素顔
V9ラストイヤーにデビューし、先発、リリーフと活躍した小川邦和(78)。長嶋も断念した「巨人出身初のメジャーリーガー」に最も接近したことのあった男は、選手として、監督としてのミスターの素顔を知る。
広島出身の小川にとってプロ野球といえばカープであり、アンチ巨人だった。しかし、長嶋茂雄だけは特別な存在だったという。
「小学校の頃、広島市民球場に広島VS巨人を何回か観に行ったことがあった。大差になると、普通は帰るでしょ。でも長嶋さんにもう1回打席が回ってくるのであれば、残って観たね。雑誌の企画で長嶋さんのサインボールとソノシートのプレゼントが当たって、家宝にしていたぐらいです」
小川は早稲田大学から日本鋼管を経て、ジャイアンツに入団した。初めて長嶋に会った時のことは今でも鮮明に覚えている。
「多摩川キャンプが初対面。長嶋さんはユニホームの下に水色のジャンパーを着ていて、それがよく似合っていた。もう後光がさしているようでしたよ」
いきなりスターのオーラに圧倒された小川だが、場所を変えて宮崎キャンプ第2クールが終わった頃に長嶋から声をかけられた。
「マッサージを受けている時、長嶋さんが来て『練習はどうだ? きついか?』と聞かれたので、『大学の時のほうがきつかったです』と答えた。そうしたら『そうだろうな。大学はきついよな』と返ってきただけでなく『女性のほうはどうだ? うまくやっているか? 素人には気をつけろよ』と妙なアドバイスをいただきました(笑)」
いざ実戦が始まれば、マウンドでは右に長嶋、左に王が守っている。「バカじゃなければ緊張するよ」と述懐するが、長嶋の存在は心強かったという。
「2年目のカープ戦で初完封した時、長嶋さんが2打点を挙げてくれて2対0で勝てましたね。その年は12勝したのですが、ずいぶん助けられましたよ」
マウンドに来て、話しかけられることもあった。
「配球を指示されたこともあった。『真ん中だぞ』と言われて、押し出しをしてしまったこともありました(笑)。時にゲッツーが取れる場面で、インコースに強い右打者だと『アウトコース投げろ』と言ってくることがあった。要は一塁側にゴロを打たせろということ。最晩年だったから自分のほうに打たせろと言えなくなっていたのかもしれませんね」
75年からは、長嶋監督のもとでプレーすることになったが、
「長嶋監督1年目は弱くてね。負けると、ベンチに置いてある麦茶の入ったヤカンを蹴るんですよ。それが1メートルくらい宙を舞った。小林繁が『そろそろ来るぞ!』って教えてくれて、2人で逃げていましたよ(笑)。ある時、強く蹴りすぎたのか足の爪が剥がれるほどのケガをして、痛いのをガマンして帰っていった。以降、蹴らなくなりました(笑)」
思うような結果が残せなかった監督初年度は、イライラを募らせていたことだろう。ベロビーチキャンプで、メジャー相手に完封をやってのけた島野修に目をかけたが、シーズンに入ると精彩を欠いた。
「4回で早々に降板させた時、『もう一度ピッチングして来い!』とお客さんの前で怒って、ブルペンに行かせたんだよ。監督としては『強くなれ!』というメッセージなんだけどね」
同年には、メジャーリーガーのデーブ・ジョンソンを大型補強として迎え入れているのだが‥‥。
「でも全然打てなくて、シーズン途中に手首の手術で帰国することになったんだよね。みんな、もう日本には帰ってこないと思っていた。僕がロッカールームで着替えていたら、そのジョンソンが入って来た。衝立があって姿は見えなかったんだけど、続いてズダズダッてものすごい音で階段を上がってくる音がした。長嶋監督でした。よっぽど腹が立っていたのか『You are woman!』って言葉をジョンソンに投げつけていましたね」
ちなみにジョンソンは日本に戻ってきて、翌年には一定の成績を残している。
激情型の一面もある一方で、長嶋茂雄こそ「巨人軍は紳士たれ」を率先して体現していたという。
「よく外国人選手とか、プロなのにグラウンドにツバを吐く人がいるでしょ。長嶋さんは絶対に吐かなかった。そして、調子が悪くても休むことを絶対にしなかった。長嶋さんや王さんが手を抜かないから、僕らも手を抜けなかったんです」
小川は引退後も長嶋との交流があり、さまざまな思い出が今も蘇る。
「長嶋さんが監督を辞めてから、親しいメンバーでゴルフに行ったりしました。アプローチショットが直接カップインすると、中学生のように大喜びするんだよね。キャンプ初日などにも、同じようなはしゃぎ方だったのを思い出します。そんな純粋で子供のようなところが魅力でした。僕の穿いているズボンの柄が気に入ったのか『どこで買ったの?』なんて聞いてくることもあった。周囲に気を配って、人をよく見ているのが長嶋茂雄なんです」
ミスターの逸話はいつまでも尽きない‥‥。
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