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「ソフトバンク VS ロッテ」パ・リーグ公式戦/2025年5月2日
チャンピオンベルトを取るより、取ったベルトを守る方が難しい─。
ボクシングの世界には、こういう言葉がある。
プロ野球でも同じことが言える。就任1年目にリーグ優勝を果たした監督は、2024年のシーズン終了時点で22人もいた。
しかし、連覇となると藤本定義(巨人)、森祇晶(西武)、中嶋聡(オリックス)の3人しかいなかった。今秋、4人目の栄誉に浴したのが、福岡ソフトバンクを率いる小久保裕紀である。
9月27日、敵地ベルーナドームで埼玉西武を4対1で下し、2年連続23度目(1リーグ時代含む)の優勝を決めた。
しかし優勝までの道のりは決して平坦ではなかった。本拠地での開幕カードに3連敗。その後も調子は一向に上向かず、4月から5月頭にかけて5連敗が2度。5月1日の時点では借金7の最下位に沈んでいた。首位を走るオリックスとのゲーム差は6。
不振の原因は、主力の相次ぐ故障だった。近藤健介、柳田悠岐、今宮健太、周東佑京らが次々に戦列を離脱し、ベストメンバーが組めない状況が続いた。
選手会長の周東が序盤戦をこう振り返っている。
「僕自身もケガで抜ける前のあたり(4月中旬)ですかね。近藤さんがいなくなって、ギータさん(柳田)もいなくなって。なかなか勝てない時期でもあり本当にどうしたらいいんだろうって思いましたね。監督にミーティングで“今いる選手が最高の戦力だから”と言っていただきましたが、心のどこかで“早く帰ってきてほしい”と思ってました」(「スポニチ」9月28日付)
そんな状況下、反転攻勢の引き金となった試合がある。5月2日、本拠地ペイペイドームでの千葉ロッテ戦だ。
このゲームも落とせば6連敗。5月攻勢も絵に描いたモチに終わりかねない。
先発はソフトバンクが有原航平、ロッテがオースティン・ボス。1回表、有原はいきなりグレゴリー・ポランコに3ランを浴び、チームは苦境に立たされる。5回裏に柳町達のタイムリーで1点を返したが、試合は1対3のまま最終回へ。
ロッテの守護神・益田直也は3番・栗原陵矢を右飛に、4番・山川穂高を三振に切って取り、ゲームセットまで、あとアウトひとつ。
だが、ここからソフトバンクは驚異的な粘りを発揮する。5番・中村晃、6番・柳町の連打で、2死ながら一、二塁。左打席に入った7番・牧原大成は益田の外角低めに沈むボール気味のシンカーを、ほとんど右手1本でレフト前に運んだ。ランナーがひとり還り、2対3。
8回から代打出場の石塚綜一郎が死球で出塁し、なおも2死満塁。ここで指揮官は笹川吉康の代打に、左の川瀬晃を送る。ここまで川瀬の打率は2割1分9厘。迷った末の決断だった。
カウント3‒1からの外角ストレートを叩いた打球は前進守備の左中間を真っ二つ。2人のランナーがとびはねるようにホームを駆け抜け、ソフトバンクは4対3でサヨナラ勝ちを収めた。
代打逆転サヨナラタイムリーを放ち、お立ち台に立った川瀬の目は心なしか潤んでいた。
「みんながつないでくれたものを還してやろう。その思いだけでスイングした」
ここから5連勝。指揮官が口にした「奇跡のゲーム」がV字回復のターニングポイントとなった。
二宮清純(にのみや・せいじゅん)1960年、愛媛県生まれ。フリーのスポーツジャーナリストとしてオリンピック、サッカーW杯、メジャーリーグ、ボクシングなど国内外で幅広い取材活動を展開。最新刊に「森喜朗 スポーツ独白録」。
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