芸能
Posted on 2026年01月10日 10:00

三又又三の「社長、前借りいいですか?」〈人生は合気道〉

2026年01月10日 10:00

 元気ですか〜!(猪木風)。還暦ブレイクを本気で狙っている三又又三(58)です。

 人生は合気道─。いつもこの言葉を胸に、芸と仕事に勤いそしんでいます。

 この生き方を教えてくれたのはテリー伊藤さんでした。テリーさんがディレクターを務めていたTOKYO MXの「TokYo,Boy」(99年放送スタート)に出演した際、ロケバスでお話しする機会があったんです。その時はちょうど格闘技イベントのPRIDEが盛り上がっていたこともあって、ふとこんな質問をしてみたんです。

「テリーさん、バラエティーっていうのは、格闘技にたとえるとやっぱり総合格闘技ですかね?」

 するとテリーさんは「違うよ」と言って、こう続けたんです。

「合気道だよ。当たり前じゃないか。たとえば三又が(ビート)たけしさんの番組に出る。たけしさんはどんなふうに攻めたいのか。三又にどんな受け身を取ってほしいのか。それを感じ取って、たけしさんが喜ぶようにキレイに投げられるんだよ。合気道だろ、合気道」

 この合気道という言葉が僕の心にスーッと入ってきたんです。「あ〜確かにそうだな〜」って。僕はそれまで、相手がグイグイ押してきたら、ムキになって押し返していましたが、その時に気づいたんです。押し返してどうすんだよ。引いて投げられればいいじゃんって。

 不動産の仕事も同じ。「家を買ってください。お願いですから買ってください」なんて押し続けたらお客さんは逃げてしまいます。だから私は一歩引いてこう聞くんです。

「どういうところに住みたいんですか?」

 お客さんに家庭の事情や将来のビジョンを話してもらう。「そうですか〜」と聞き役に徹して相手を気持ちよくさせていく。ついつい、がっついてしまう性分を合気道の精神で抑えて、そのデータをきちんと頭に入れておくんです。そして節目節目で「そういえばこんな物件が」「ちょうどあのエリアに」と押すわけです。

 逆に、お客さんからガツガツと「買いたい、買いたい」と言われたら、僕だって引いちゃいますけどね。

 大切なのは、この押して引いての駆け引き。僕にとって合気道は人生そのものです。

 そんな僕でも合気道の精神をつい忘れてしまうことがありました。

 数年前の出来事ですが、久しぶりに地上波のとある番組からお呼びがかかったんです。

 さっそく打ち合わせに行くと、若い担当ディレクターが開口一番、こう言うんです。

「三又さんってクズじゃないですか」

 第一声が「クズ」ですよ。初対面の人間に、しかも年上に向かって「クズ」って‥‥。さすがの僕も頭に血が上って反射的にこう言い返してしまったんです。

「おいおい、なんだお前、いきなり。お前に何かしたか?」

 こんな態度を取ってしまったことで、大切な打ち合わせでディレクターと全然スウィングできなかったんですよ。

 相手が「クズ」で押してきたら一歩引いて、

「は〜い、そうでございます」

「はいはい、クズと言われてますね〜」

 なんて笑顔で応じていればよかったんです。この時だけはいつもの合気道ができなかった。

 合気道の精神を忘れてしまったことで、ほぼ100%決まりかけていたテレビの仕事は白紙になりました。今でも忘れられない大きな“しくじり”ですよ。やり直せるならやり直したいと今でも思っています。

 みなさんも、もしもカーッと頭に血が上りそうになったら、合気道の精神を思い出してください。

三又又三(みまた・またぞう)株式会社TAP所属のお笑い芸人。「踊る! さんま御殿!!」(日テレ系)、「志村けんのバカ殿様」(フジ系)等数々のバラエティーに出演。2023年より不動産会社に勤務し、芸人との二刀流で活動。今夏より漫才協会に入会。

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