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Posted on 2026年02月08日 10:02

〈本当の兄弟仲〉歴史が証明した「警戒すべきは弟」/豊臣兄弟もびっくり!歴史を動かした「日本の兄弟」

2026年02月08日 10:02

 戦国時代の兄弟というと、兄弟間で跡目や権力を巡っての骨肉の争いというイメージがある。河合氏によると、

「日本史に名を残すのは、やはり権力を握ったお兄ちゃんのほうが圧倒的に多いですね。しかし、権力者の兄貴にひとたび何かあれば、弟は後継者となりうるわけで、兄から見ると、弟は頼れる存在であると同時に、自分に取って代わる人間として、監視すべき存在でもあると言えます」

 対して、ミスター武士道氏は、兄弟仲の良し悪しが武将にとっては命運を左右すると、実例を挙げる。

「兄貴がしょうもない奴だったら、下剋上されて殺されたりすることもありますから、歴史に残る兄弟では圧倒的に兄貴が優秀というか、すごい人が多いんだと思います。鎌倉幕府を作った源頼朝と義経の兄弟なんか、兄を助けて大活躍した義経は人気者ですけど、結果的には兄貴の頼朝に殺されてしまいますよね。信長や伊達政宗なども弟を殺していますけど、武田信玄や上杉謙信と渡り合って小田原北条氏を関東の覇者にした北条氏康の息子たちの北条氏政、氏照、氏規、氏邦の四兄弟などは、めちゃめちゃ仲がいいので兄弟間の諍いは一切ありませんでした。また、薩摩の島津義久、義弘、歳久、家久の四兄弟も同じように長男の義久を中心に武勇に優れた義弘以下の弟たちが結束して戦国最強とも言われた軍団を作っていました。信長の息子たち信雄、信孝の兄弟も跡目を争いますが、そこにつけこんだ秀吉が息子たちを差し置いて信長の孫である幼い三法師を担いで後見人になり天下をかっさらっていったわけで、やはり兄弟仲が悪いと、家は滅びますね。そもそも兄弟がいない今川義元の息子の今川氏真などは、頼れる兄弟がいなくて苦労しています。ほんとは人質になっていた家康が氏真の弟の役割だったと思いますが、家康が独立してしまったので、今川家は滅びることになりました。兄弟の支えがない当主というのはかなり辛いものがあり、やはり兄弟は大切なんだと思います」

 河合氏は、歴史を動かし兄弟間で争った兄弟として、室町幕府を開いた足利兄弟を挙げる。

「足利尊氏と直義の兄弟は、もともとは仲の良かった兄弟ですが、幕府内の対立、内乱(観応の擾乱)で戦い、直義は殺されます」

 長男が家を継ぐ、いわゆる長子相続は、戦国時代にはまだ制度化はされていなかったという。

「徳川家康が、3代将軍を決める時に家光を推して長子相続を制度化したと言われていますが、それ以前にも基本的には兄が家督を継ぐことが多かったようです。同母弟といいますが、同じ母親から生まれた兄弟ではたいてい兄が継いでいます」(河合氏)

 そこで大事なのは、正妻から生まれた子が一番で、正妻の子が跡を継ぐことになる、つまり奥さんの血筋が大事だということになるのだという。

「伊達政宗は、正室の愛姫との間にしばらく子供が生まれなかった。すでに側室の子が跡継ぎになっていたんですが、20年ぐらい経って男の子が生まれてその子が跡を継ぐことになりました。また、上杉謙信は、長尾家の次男だったんですが、兄の晴景が頼りなかったので、家臣たちに推されて跡を継ぐことになります。謙信は幼い頃から寺に入り仏道を歩んでいましたが、還俗して家督を継ぎ、上杉憲政から上杉の姓と関東管領を継ぐことになります。兄の晴景は一旦は長尾家の跡を継いだものの、酒色に溺れて人望もなく、弟が兄を凌しのいで有名になった稀なケースです」(河合氏)

 こうしてみると、兄が何事かを成し遂げ、それを弟が補佐するというパターンが、成功の秘訣であったことに気づかされる。まさに、豊臣兄弟は、この典型である。ただ、兄が権力を握ったあとに、弟も力を持ち始めると、邪魔な存在にもなり得る。これが、日本史上に現れた兄弟の真実と言っていいだろう。

 時代は下るが、江戸期の兄弟について、河合氏は、

「徳川3代将軍の家光には忠長という弟がいました。2代将軍の秀忠とその正室の江(浅井三姉妹の末妹)は忠長をかわいがっていて、忠長に継がせたいと考えていました。ところが、家光の乳母の春日局が駿府にいた家康に直訴。家光が将軍になることができた」

 秀忠の死後、忠長は改易となり、領国全てを没収され、上野国高崎へ逼塞の処分が下される。そして幕命により、高崎の大信寺で切腹に追い込まれる。家康の孫にして、信長の妹・お市の方の娘の江が産んだ2人の兄弟が、一方は将軍になり、一方は自らの乱行の果てに享年28で死んだのだ。

「家光は、忠長の処分についての後悔、無念の思いがあったのか、保科正之という異母弟がいることを知って補佐役として重用することになります。正之は、庶子で一切認知されていなかった。父親の秀忠に認知されていない子供は、将軍の子ではないわけですが、それを家光が抜擢して会津20万石の大大名にして、会津松平家の藩祖にする。正之は、異母兄の家光の恩を忘れないようにと、『将軍家を第一に』という会津藩の家訓を作って、以降、徳川将軍家を支えていきます」

 その家訓を守り続けた会津藩は、幕末に朝敵とされ、会津戦争で大敗北を喫きっするところまで繋がっていく。家光・忠長の兄弟間の確執が、保科正之との絆を生み、幕末まで続いたという歴史の皮肉がここにある。

 兄弟というものの業の深さを感じざるを得ない。そして、あらためて気付くのは、兄弟仲が日本の歴史を確実に動かし続けてきたという事実である。

河合敦=歴史作家。多摩大学客員教授、早稲田大学非常勤講師。1965年、東京都生まれ。「歴史探偵」(NHK)をはじめ多くのメディアに出演。『大久保利通 西郷どんを屠った男』『戦国武将臨終図巻』(小社)、最新刊『豊臣一族秀吉・秀長の天下統一を支えた人々』(朝日新書)など著書多数。

ミスター武士道=1990年、三重県生まれ。歴史系YouTuber。2019年に歴史解説チャンネル『戦国BANASHI』を開設。戦国時代を中心に、日本史や大河ドラマ解説が話題となり、登録者20万人を超える人気チャンネルに。https://www.youtube.com/sengokubanashi

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