政治
Posted on 2026年02月20日 06:30

前駐豪大使・山上信吾が日本外交の舞台裏を抉る!~激烈衆院選で判明した「戦後リベラル・左翼勢力が駆逐された」当然の理由~

2026年02月20日 06:30

 2月8日の衆議院選挙を振り返って、湧いてくる感慨がある。ひとつの時代が終わりを告げた、との思いだ。

 かつて大東亜戦争の熾烈な戦場となった硫黄島や沖縄は言うに及ばず、本土の多くの主要都市が焼け野原となった日本。最前線で奮闘した軍人だけでなく、銃後を守る数多くの庶民までが戦禍の辛酸をなめた。「反戦・平和・護憲」を旗印とする左翼勢力が伸長するのは自然な流れでもあった。
 しかしながら、もはや戦後80余年。今般の選挙では中道改革連合、日本共産党、社会民主党、れいわ新選組など、そうした主義・思潮に与してきた党派が軒並み、顕著に衰退した。その原因は「高市旋風」という風が吹いたことだけなのか。

 否。外交・安全保障という観点から見ると、左翼衰退の理由はいくつか挙げられよう。
 第一に、日本を取り巻く戦略環境の変化に、あまりにも不感症であり過ぎたことではないか。
 今や日本は中国、北朝鮮、ロシアという、核兵器を有するだけでなく、日本への敵対的姿勢・言動を憚らない権威主義国家に囲まれている。これほど厳しい戦略環境に置かれている世界の主要国はない。「敗戦国」「侵略国」だとして頭を低くしていれば国難が通り過ぎてくれる環境にはない。

 にもかかわらず、議席を失った岡田克也議員は衆議院予算委員会での「台湾有事は『存立危機事態』にあたる可能性がある」との高市総理答弁を問題視し、声高に撤回を求める始末。では中道として、どのような場合が「存立危機事態」にあたると考えるのか、あたらない場合、日本は如何に行動すべきか。
 対案の提示は全くなかった。

 第二に、左翼勢力こそが反日勢力の片棒を担いでいるとみられてきたことだ。高市答弁の撤回を求めたのが中道と中華人民共和国であったのは偶然ではない。如何に国民の信頼を損なったか、思いを致すべきだろう。
 拉致問題が北朝鮮の所業であることを最後まで認めようとしなかったのが旧社会党だったことが想起される。

 第三に、「学び」の姿勢がうかがえないことだ。
「悪夢の民主党政権」は有事の際に核持ち込みの「密約」があることを暴いたとしながら、実態にそぐわないことが明らかになった非核三原則の見直しに汗をかくことはなかった。むしろ思考停止に陥ったかの如く、三原則堅持に拘泥した。

 こうした頑なな対応は、政界だけに限らない。
 いわゆるオールドメディアに登場する外務省出身者といえば、東郷和彦氏(元条約局長)や田中均氏(元アジア大洋州局長)、藪中三十二氏(元事務次官)など団塊世代が思い浮かぶ。東郷氏は「村山首相談話を継承し発展させる会」なる市民団体の呼びかけ人となり、「存立危機事態」答弁の撤回を求める記者会見まで開いた。田中氏は衆院選で、中道改革連合に投票すべきだと訴えていた。藪中氏は「サンデーモーニング」(TBS系)で、戦後平和主義的甘口コメン?を繰り返してきた。

 こうした実務家が朝日・岩波文化とも称される左翼論調に影響され、拡大再生産してきた面は否めない。
 しかし、時代は変わった。もはやオールドメディアが世論の基調を設定する時代ではなくなった。むしろSNSやYouTubeが遥かに大きな影響力を及ぼす時代だ。
 十余年前に東大公共政策大学院で講師を務めた時、もはや学生は新聞を読まず、テレビニュースも見なくなっていた。現在、教鞭をとっている同志社大学法学部では、オールドメディア離れがいっそう進んでいる。左翼媚中勢力が成敗されたのは、こうした時代環境の変化がもたらした業だろう。

 今後の問題は、圧勝した与党自民党の中に、戦後リベラルを引き継ぐ向きが脈々と息づいていることだ。皮肉なことに、彼らの間には自らを「保守」と呼びたがる傾向が看取されるものの、世界標準では全く真正保守にはほど遠い。むしろリベラルそのものだ。
 だから憲法改正には及び腰であり、滑稽にもLGBT法を無批判に担ぎ、「多文化共生社会」などと日本になじまない概念にしがみつくことになる。

 高市政権に限らず、かつて自民党が国政選挙で大勝したのは、いずれも保守アジェンダを掲げた時だった。はたして彼らはいつ学ぶのだろうか。学びがなければ、次に成敗されるのは彼らとなろう。

●プロフィール
やまがみ・しんご 前駐オーストラリア特命全権大使。1961年、東京都生まれ。東京大学法学部卒業後、84年に外務省入省。コロンビア大学大学院留学を経て、ワシントン、香港、ジュネーブで在勤。北米二課長、条約課長の後、2007年に茨城県警本部警務部長を経て、09年に在英国日本国大使館政務担当公使、日本国際問題研究所所長代行、17年に国際情報統括官、経済局長を歴任。20年に駐豪大使に就任し、23年末に退官。同志社大学特別客員教授等を務めつつ、外交評論家として活動中。著書に「中国『戦狼外交』と闘う」「日本外交の劣化:再生への道」(いずれも文藝春秋社)、「国家衰退を招いた日本外交の闇」(徳間書店)、「媚中 その驚愕の『真実』」(ワック)、「官民軍インテリジェンス」(ワニブックス)、「拝米という病」(ワック)などがある。

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