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記事全文を読む→生誕90年 立川談志と最後の弟子〈初めて書く「イリュージョン」な日々〉(9)アサヒ芸能とは大衆娯楽の王道
令和8年3月1日付で真打昇進。「立川談寛」を名乗ることとなった談吉。3年間という談志の弟子の中で最短、されど濃密な時間の中で落語家としてのすべてを学んだ。そしてあの名言「イリュージョン」の深層も─本連載、いよいよ大団円!
昨年5月、台所でビーフストロガノフを作っていた時だ。知り合いのカメラマンMから電話があった。
「談吉さん、真打決まったんですね、おめでとうございます」
「Mさん、ありがとうございます」
「実はですねー、談吉さんに雑誌連載のお話があるんですよー」
「連載、私にですか」
正直、真打の準備やら何やらでごたついていたので迷っていた。
「談吉さん今忙しいでしょうけど、別にテレビやラジオの仕事があるわけじゃないし、時間はあるでしょう」
「まあ、そう言われればないことないですけど、なんの誌面に載るんですか」
「驚かないで聞いてください。週刊アサヒ芸能です!」
「週刊アサヒ芸能!」
名前は知っていたので感嘆符付きで驚いてみたものの、内心どんな雑誌なのかはわかっていなかった。しかし、せっかくのお話だし、別に時間に余裕もあるので二つ返事で引き受けた。
「週刊アサヒ芸能さんに連載するのが夢だったんです。ぜひよろしくお願いします」
お世辞を言って電話を切ってからすぐ、ChatGPTに聞いてみた。
─週刊アサヒ芸能 どんな雑誌?
〈一言でいうと、芸能ゴシップを軸に、下世話さと社会ネタを混ぜた大衆週刊誌です〉
下世話。大丈夫なのか。追記を見るとこう書いてあった。
〈品がいいとは言われないが、大衆娯楽としての週刊誌文化の王道〉
王道。私は王道という言葉に弱い。アイスクリームはバニラが好きだし、好きなプロレスラーはと聞かれれば、ジャイアント馬場と答えるくらいだ。
「うん。王道なら間違いない」
一人呟きながら、何度も首を縦に振った。連載という言葉に気を取られてたのだろう。誤ってカレー粉を入れてしまったビーフストロガノフは、見事にビーフカレーになっていた。そういえば、師匠の談志はカレーが好きだった。残り物や腐りかけのものを鍋にぶち込んでは、カレーに錬金していた。もしかしたら「俺のことを書け」という談志からのメッセージだったのかもしれない。
立川談吉(たてかわ・だんきち)1981年12月14日生まれ。北海道帯広市出身。2008年3月に立川談志に入門。11年6月に二ツ目昇進。12年4月に立川左談次門下へ。18年7月に立川談修門下へ。26年3月1日に真打昇進「立川談寛」襲名予定。
写真/産経ビジュアル
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