芸能
Posted on 2026年03月01日 10:00

生誕90年 立川談志と最後の弟子〈初めて書く「イリュージョン」な日々〉(9)アサヒ芸能とは大衆娯楽の王道

2026年03月01日 10:00

 令和8年3月1日付で真打昇進。「立川談寛」を名乗ることとなった談吉。3年間という談志の弟子の中で最短、されど濃密な時間の中で落語家としてのすべてを学んだ。そしてあの名言「イリュージョン」の深層も─本連載、いよいよ大団円!

 昨年5月、台所でビーフストロガノフを作っていた時だ。知り合いのカメラマンMから電話があった。

「談吉さん、真打決まったんですね、おめでとうございます」

「Mさん、ありがとうございます」

「実はですねー、談吉さんに雑誌連載のお話があるんですよー」

「連載、私にですか」

 正直、真打の準備やら何やらでごたついていたので迷っていた。

「談吉さん今忙しいでしょうけど、別にテレビやラジオの仕事があるわけじゃないし、時間はあるでしょう」

「まあ、そう言われればないことないですけど、なんの誌面に載るんですか」

「驚かないで聞いてください。週刊アサヒ芸能です!」

「週刊アサヒ芸能!」

 名前は知っていたので感嘆符付きで驚いてみたものの、内心どんな雑誌なのかはわかっていなかった。しかし、せっかくのお話だし、別に時間に余裕もあるので二つ返事で引き受けた。

「週刊アサヒ芸能さんに連載するのが夢だったんです。ぜひよろしくお願いします」

 お世辞を言って電話を切ってからすぐ、ChatGPTに聞いてみた。

─週刊アサヒ芸能 どんな雑誌?

〈一言でいうと、芸能ゴシップを軸に、下世話さと社会ネタを混ぜた大衆週刊誌です〉

 下世話。大丈夫なのか。追記を見るとこう書いてあった。

〈品がいいとは言われないが、大衆娯楽としての週刊誌文化の王道〉

 王道。私は王道という言葉に弱い。アイスクリームはバニラが好きだし、好きなプロレスラーはと聞かれれば、ジャイアント馬場と答えるくらいだ。

「うん。王道なら間違いない」

 一人呟きながら、何度も首を縦に振った。連載という言葉に気を取られてたのだろう。誤ってカレー粉を入れてしまったビーフストロガノフは、見事にビーフカレーになっていた。そういえば、師匠の談志はカレーが好きだった。残り物や腐りかけのものを鍋にぶち込んでは、カレーに錬金していた。もしかしたら「俺のことを書け」という談志からのメッセージだったのかもしれない。

立川談吉(たてかわ・だんきち)1981年12月14日生まれ。北海道帯広市出身。2008年3月に立川談志に入門。11年6月に二ツ目昇進。12年4月に立川左談次門下へ。18年7月に立川談修門下へ。26年3月1日に真打昇進「立川談寛」襲名予定。

写真/産経ビジュアル

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