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記事全文を読む→佐藤誠「取調室の裏側」〈連続現金強奪事件の「異様な構造」JV化する組織犯罪の新トレンド〉
1月29日夜から30日朝までの間に、上野、羽田、香港で相次いで発生した現金強奪事件。6億円以上ものカネが狙われる犯罪サスペンスが3月14日に大きく動いた。上野事件の容疑者7人が逮捕されたのだ。
本件は被・加害者全員が「悪人」。この異様性から事件以降、追加報道がほぼなされなかった。
香港の強奪では、地元警察が強盗共謀の罪で4人を起訴。うち一人は羽田と香港で被害者を装いながら、実行犯に情報を流していた「内通者」の疑いが公判資料で明らかに。警視庁は一連の事件を、同一グループによる「内輪もめ」と見て捜査を急いだ。羽田で襲撃された人物は捜査員に、
「金の売却で得た現金を毎日のように香港に運んだ」
と説明。「香港」と「金」が出れば、裏社会の錬金術というのは捜査の常識だ。
香港は世界有数の金融センターで、両替商が競合。有利な為替レートを選べて金取引も非課税だ。香港購入の金を、日本の税関で申告せず「密輸」すれば、本来課される消費税10%を免れ、その分を利ザヤとして享受できる。元締めは「運び屋」に単純作業を繰り返させるだけで、雪だるま式に利益が膨らむ。現金の直接授受のため、警察も流れが解明できない。しかし運び屋の報酬を「1回3万円」とケチったことで不満を抱えた下っ端から「内通者」を生み、大金を強取された。
逃亡中の上野と羽田の実行犯を追う上で警察が重点を置いたのは使用車両の足取りだ。防犯カメラ映像を収集、解析する「リレー方式」が採られたことが報じられたが、偽造ナンバーの捜査もされたと俺は読む。本物同様の浮き出し文字再現には、専用金型とプレス機が不可欠。熟練の「職人」も必要だ。調達は容易ではなく、裏社会では同一の偽造ナンバーの使い回しが常態化していた。
昨年11月、大阪府警門真署内の駐車場で、押収した盗難車から偽造ナンバーが盗まれた。没収されれば次の犯行に差し支える「商売道具」。リスク覚悟で挑んだ目的は窃盗ではなく回収だ。重宝し使い回す裏社会の習性を逆手に、警察は「偽造ナンバー事案」をデータベース化。Nシステム(自動車ナンバー自動読取装置)の走行履歴を照合し、製造拠点や流通ルートを絞り込んでいる。
もうひとつ俺が注目したのは犯罪のジョイントベンチャー(JV)化だ。逮捕者のうち3人が暴力団幹部だが山口組系、住吉会系、極東会系とバラバラなのが象徴的だ。この構造が「元締め」の逮捕を困難にしている。「犯罪JV」が組織犯罪のスタンダードになっている現実については次回解説する。
佐藤誠(さとう・まこと)警視庁捜査一課殺人犯捜査第一係、通称「サツイチ」の元取調官。1983年、警視庁入庁。2004年に捜査一課に配属。『伝説の落とし屋』と呼ばれる。「木原事件」で木原誠二氏の妻・X子さんの取調べを担当。2022年に退官。
佐藤誠の相談室
https://satomakoto.jp/
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